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占術師速水丈太郎 五つの港で
第二十四章
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第二十四章

「全くのう。けしからん奴じゃ」
「その通りです。しかしこの地蔵達ですが」
「今修復をお願いしておるよ」
「左様ですか」
「このままにしてはおけんよ」
 老人はその忌々しげな目で壊されてしまっている地蔵達を見ながら話す。
「もう話はしてある」
「修復は近いですか」
「こういうものはお金ではないのじゃよ」
 老人の目の感じが変わった。忌々しげなものから慈しむものになっている。その言葉もそれと共に自然と穏やかなものになっているのであった。
 そうしてである。速水にさらに話す老人だった。
「お金ではなくじゃ」
「お金でなくですか」
「心なのじゃよ。そんなものはどうでもいいのじゃよ」
「そうですね。それでは私も」
「あんたも?」
「出させてもらっていいでしょうか」
 こう老人に提案するのである。
「心として」
「ふむ、どうやらあんたはじゃ」
「私は?」
「よい心掛けの持ち主のようじゃな」
 それを見抜いた言葉であった。
「見事じゃ。それではじゃ」
「心を受け取って下さいますね」
「金はよい」
 実際に金を出すことになってはいるがそれでもであった。こう言うのである。
「心を受け取らせてもらう」
「どうもです」
「しかしあんたは」
 あらためて速水を見ての言葉である。
「それを今出せるのかのう」
「幸いお金には困っていない仕事ですので」
 言いながら財布を出してきた。そこからまずは十万円程出してみせる。そうしてそのうえで老人に対してさらに話すのであった。
「何でしたらカードも」
「カードまで持っておるのか」
「それで如何でしょうか」
 老人に対して問う。
「すぐに出してきますが」
「いや、それだけでよい」
 しかしであった。老人はそれだけでいいというのである。鷹揚に微笑んでの言葉である。
「それだけでじゃ」
「この今のお札だけで、ですか」
「言った筈じゃ。受け取らせてもらうのは心じゃ」
「だからですか」
「あんたの心は受け取らせてもらった」
 速水に対する言葉は続く。
「そういうことじゃよ。だからじゃ」
「わかりました。それではです」
「心を見せてもらった」
 また心という言葉を彼に告げるのだった。
「それで充分じゃからな」
「ではそれで」
「うむ、あんたはじゃ」
 今度は速水自身に対して言う言葉だった。
「その外見は派手じゃがな」
「派手ですか」
「しかしその中身は違うな」
 微笑んで言うのである。
「どうやらな」
「そうでしょうか」
 そう言われるとつい苦笑いになる速水だった。その顔で話すのである。
「それは」
「その謙遜もいいのじゃよ」
「これもですか」
「うむ、その中身はしっかりしておる」
 速水の内面をしっかりと
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