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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
五十 〜伏龍〜
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さんに対して起きた反乱ですから、向かってくれば当然、そちらに注意が集まります」
 見た目は穏やかな少女なのだが、やはり頭は切れるな。
 袁紹軍が、まだあの金色の装備のままなのかどうかはわからぬが、流石に牙門旗はそのままであろう。
「では、その策で決まりだな」
 袁紹が、この策に異を唱えなければ、だが。
 とは申せ、そもそも我らは援軍、本来戦うべきは袁紹なのだ。
 意図に気付くかどうかはともかく、袁紹には動いて貰わねばなるまい。

 そして。
 夜陰に紛れて、袁紹軍が二手に分かれ、必要以上に鬨の声を上げ始めた。
「敵陣に動きあり。袁紹軍に向かっていきます」
 斥候の知らせを受け、我が軍も動き出した。
「星、頼んだぞ」
「はっ、お任せあれ。……ただ、一つだけ残念な事がありますな、主」
 そう言いながら、星は牙門旗を見上げる。
「主の、新たな牙門旗のお披露目なのですが。こう暗くては、敵味方に見えませぬ」
「仕方なかろう。これより先、そのような機会を待てば良い」
「そうですな。その時も主、先駆けはこの星にお任せ下されよ?」
 星は馬に乗り、槍を振りかざした。
「者ども、続け!」
「応っ!」

 不意を打たれた敵軍は大混乱。
 敵の首魁らしき者は星が討ち取り、黄巾党の残党は殆どが戦死、庶人で反乱に荷担した者は降伏してきた。
 結果、他の敵陣も雪崩を打って潰走したようで、夜が明けると事は片付いていた。
 袁紹軍も被害は軽微だったとの事。
 そして、袁紹らと合流を果たす事も出来た。
「土方さん、この通りですわ」
 あれだけ高慢ちきだった態度も影を潜め、袁紹は素直に頭を下げてきた。
「ありがとうございました、土方さん。ほら、文ちゃんも」
「あ、ああ。助かったぜ、アンタらが来なきゃ、あたいも姫も、どうなっていた事か」
 顔良は素直に礼を述べ、文醜は……まぁ、相変わらずだな。
「袁紹殿。このまま、ギョウまでご案内致そう」
「ええ……。助かりますわ」
「出立は、数刻後。それまで、一休みなされよ」
 そう告げ、天幕を出る。
「諸葛亮、見事であったぞ」
「エヘヘ、ありがとうございます」
 素直に喜ぶ諸葛亮。
「手腕は見事という他ござらぬな。尤も、更なる難敵がギョウで待ち構えておりますがな」
「え? あ、あの……。もしかして、郭嘉さんと程立さんの事でしょうか?」
「これ、星。からかうのは止せ」
「むう、これは心外な。私は事実を申したまでですぞ?」


 ギョウに戻り、諸葛亮は新しい我が仲間となった。
「朱里、とお呼び下さい。ご主人様」
 ……いきなり真名を預かった時の一言も含め、一悶着はあったが。
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