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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
大会〜準決勝 前編〜
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だろう。
 それでも自分の艦隊を示す小さな点を、簡単に飲み込めそうな敵のマークに、アッテンボローは手の汗を小さく拭った。

 下手をすれば、一瞬で壊滅するだろう戦い。
 だからこそ、面白い――生意気な後輩に、退却戦のやり方を教えてやろう。
 そう考えて……あまり自慢にならないけどなと、アッテンボローは思った。

 + + +

「――!」
 幾度か目の、声にならない声をアッテンボローは吐いた。
 これほどの圧力は、今まで経験しなかった。
 ともすれば、敵に接近を許してしまい、一瞬でアッテンボローの艦隊は飲み込まれるだろう。

 それでもいまだにアッテンボローの艦隊を飲み込めないのには理由があった。
 一万五千隻の艦隊が同時に動けば、他の艦隊との連携が難しく、運動が遅れる。
 そのため、先の高速艦のように一部の艦隊でアッテンボローの艦隊運動を送らせて、その隙に周囲を取り囲む必要がある。

 しかし、アッテンボローはそれを許さない。
 突進を狙う艦隊に向けて、一斉射撃を行い、近づくことを許さなかった。
 もっとも、後先を考えない弾薬の大放出であることには関わらず、例え合流地点にアッテンボロー艦隊が撃破されずにたどり着いたとしても、その後の戦闘行動は難しいだろうが。
 しかし、アッテンボローにはそこまで考える余裕はない。

 出し惜しみをすれば、それこそ後などないだろう。
 大艦隊でもあるにも関わらず、一糸乱れない艦隊運動。
 苛烈に、次々と高速艦を打ち出してくる技能。
 そして、地味にこちらの体力を奪う砲撃。

 すでにアッテンボローの指揮する二千隻のうち、五百隻が撃ちとられている。
 それでも、アッテンボローは後退を続けていた。
 敵の高速艦を予見し、動き始めた瞬間に砲撃を集中させる。
 わずか一度でも失敗すれば、殲滅されるであろう動きを、アッテンボローは一度も失敗することなく、後退を続けている。

 戦闘が始まって、わずか五分ほどしか経っていない。
 それでも体感的には三十分ほど経過したような気がする。
 敵はなかなかアッテンボローを捉えられないことに、苛々してきたらしい。
 突入する攻撃艦を増やして、こちらを捉えようとする。

 だが、アッテンボローはそれをさせない。
 艦隊を操作して、逃げる、逃げる、逃げる。
 アッテンボローは退却戦の名手にふさわしい動きを、続けていた。
 次々と繰り出される攻撃に、瞬きもせずにコンソールを叩き続ける。
 ワイドボーン艦隊から五百隻の小艦隊が三艦隊。

 その鼻面に攻撃を叩きつければ、視界の端でローバイク艦隊が二艦隊を動かしている。
 見えている。
 相手に対して効果的に出血を与えながら、アッテンボローは唇を舐めた。
 ゆっくり
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