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占術師速水丈太郎 五つの港で
第一章
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第一章

                 占術師速水丈太郎  五つの港で
 速水丈太郎はこの日防衛省に呼ばれていた。そこの一室に案内され深く黒いソファーの上に腰を落としそのうえで背広組の若い男の話を聞いていた。
「海ですか」
「はい、海上自衛隊です」
 若い男はここで海上自衛隊の名前を出してきたのであった。
「それにまつわるお話でして」
「前もありましたね」
 彼はこんな風にも言った。言いながら顔の右半分のその右目を細めさせている。顔の左半分は彼自身の髪の毛によって完全に覆い隠されている。
 その目で相手を見ながら。そうして語るのであった。
「確かあの時は横須賀でしたね」
「覚えておられるのですね」
「自衛隊絡みでの最初のお仕事でしたから」
 だからだというのである。
「それはです」
「それではお話はわかりますね」
「ええ、それはもう」
 わかっていると。はっきりと答えた。
「私のお仕事はそうしたものばかりですので」
「占い師なのにですか」
「そうです、確かに占い師は私の本職です」
 そのことは言う。しかしなのだった。
「ですが」
「ですが?」
「こうした方のお仕事をすることが多いのも事実です」
「超常的なことに対するですか」
「そうです、それがです」
 まさにそれだというのである。
「それに対するお仕事も多いのです」
「ですがそれは本職ではないのですね」
「私はあくまで占い師です」
 このことはこう言って言葉を撤回しない。
「それは否定しません」
「そうですか」
「そしてです」
 速水はさらに言う。
「今回のお仕事ですが。どういったものでしょうか」
「今回のですね」
「また横須賀でしょうか」
 その場所について尋ねるのだった。
「そこは」
「いえ、それが」
 ところがここで。若い官僚は言葉を濁してきた。そうしてこんなことを言うのであった。
「海上自衛隊のことは御存知ですね」
「それが何か?」
「五つの主要な港を持っているということは御存知ですね」
「はい」
 そのことについてはっきりと答えることができた。
「まずはこの関東に横須賀」
「まずはそこです」
「ここが最も大きな基地ですね」
「そうです」
 まさにそうだという。実際に横須賀は海上自衛隊にとっては呉と並ぶ最大の基地である。港の規模も設備も停泊している艦艇の数も人員の数もかなりのものだ。
「そしてです」
「次は」
「北の大湊です」
 官僚は言葉を続けてきた。
「東北、そして北海道の護りとなっています」
「青森にあるあの基地ですね」
「そこもあります」
 大湊もだという。
「日本海には舞鶴があり」
「京都の」
「そう、かつて若狭と言われたその場所です」
 この基地もまた海
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