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占術師速水丈太郎 白衣の悪魔
18部分:第十八章
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第十八章

「折角一杯いたのに。面白くないな」
「おや」
 速水はその言葉に顔を向ける。左の光が消えてしまった。
「面白くないと」
「そうだよ。折角一杯いて楽しくなりそうだったのに。これじゃあ詰まらないよ」
「ではどうするのかしら」
 沙耶香がそれに問う。
「戦いは続けるのかしら」
「何か気分じゃなくなったよ」
 けだるい仕草で言ってきた。急に殺気が消えた。
「悪いけれど僕はこれで」
「遊びは終わりということですか?」
「うん」
 速水にも答えて頷く。
「帰るよ。じゃあね」
「あまり感心しないわね」
 ぷい、と背中を向けてきた魔人に対して沙耶香が声をかける。彼女も目に浮かぼうとしていた赤い光を消そうとしていた。それは魔人にも見えていた。
「その赤い光と金色の光もいいよ。けれど一つじゃない」
「欲張りね。一杯がいいのね」
「そうだよ。だから僕はこれで」
 引き下がる。そのまま姿を闇の中に消していく。白い影が闇の中に幻想のように消えていくのだった。
「さよなら」
 気配まで消えてしまった。闇の中には何も残ってはいない。その闇を見ながら速水と沙耶香は最初は拍子抜けしたような顔になっていた。だがやがて真剣な顔になって顔を見合わせたのであった。
「殺人快楽者というやつかしら」
「いえ、むしろ子供ですね」
 速水は沙耶香に対して答える。
「あの言動や行動を見ていると」
「そうね。けれどだからこそ面白いわね」
 沙耶香は闇の中で笑っていた。闇の中に白面が妖艶な笑みを浮かべていた。
「そうした相手と戦うというのに」
「楽しいですか」
「彼も言ってるじゃない」
 その妖艶な笑みで速水に答える。
「楽しみだって」
「楽しむ、ですか」
「相手がそうならばこちらも同じことをするだけよ」
 沙耶香はそう述べる。
「それだけね。少なくとも私はそうするわ」
「やれやれ、気楽ですね」
「この世にあるものは何もかもがうたかたのもの」
 闇の中で笑いながら述べる。
「それなら。楽しむに限るわ」
「そうですか」
「そうよ。それじゃあ私もこれでね」
「おや、どちらへ」
 離れようとする沙耶香に尋ねた。
「少し遊びにね」
「おや、その遊びとは」
「人が恋しくなったのよ」
 妖艶な笑みをそのままに速水に言葉を返す。
「だからね」
「そうですか。今宵は美酒を共にも思ったのですが。残念ですね」
「ええ。悪いけれどまた別の気分なの」
 闇の中に消え入りそうな声で語る。姿だけでなく声までが闇の中に入りそうであった。
「それじゃあね」
「はい。それではまた明日」
「警察でね」
 そう言い合って別れる。速水は別れるとそのまま街に繰り出す。そうしてあるバーに入った。ドイツ風の古風でありながら洒落た
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