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日章旗
第三章
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「この日の丸もですか」
「はい、特攻隊の人達が残したものです」
 自衛官はこう学生に答える。
「これがです」
「そうですね、これがですね」
「はい、どう思われますか」
「最初に思ったことですが」
 学生はまずは比べるのはどうかと考えながら述べた。
「特攻隊ですね」
「暴走族のですか」
「あれはここからはじまってるんですね」
「そうでしょうね、おそらくは」
「あれはあまりいいとは思いませんが」
 この学生は暴走族については否定的だ、だから彼等が日の丸に自分達の名前を書くことは日の丸への冒涜ではないかと思っている。
 だが今観ている日の丸はとうかというと。
「これは違いますね」
「そうですね、全く違いますね」
「あれは愚行です」
 暴走族自体がそうであるしそうした行為もだというのだ。
「ですがこれは違いますね」
「心がありますからね」
「日本の為に全てを捧げてですね
「そうです、特攻隊として出撃して」 
 そしてだったというのだ。
「戦死しました」
「そうですね」 
 自衛官はあえて英霊や散華とは言わなかった、この表現に抵抗がある人がいるからそれで配慮したのである。
「その人達が残したものですから」
「心が違います」
「戦争は負けましたけれど」
「この人達がいてくれましたから」
 だからだというのだ。
「私達も今こうしていますね」
「そう出来ていますね、つまり」
 学生は自分から言った、この言葉を。
「特攻して心を見せて英霊になって」
「今も、というのですね」
「日本を守ってくれているのですね」
「その心がこの日の丸にあります」
 最後の最後にそれぞれの名を書き残した日の丸にというのだ。
「この通り」
「そうですね。何かここに来て」
「この鹿屋にですか」
「色々素晴らしいものを観ていますけれど」
 特攻隊の英霊が実際に乗っていた零戦もある、海から引き揚げられ今もその姿を残しているのだ。
「この日の丸も」
「素晴らしいですね」
「はい、こうして観ていると」
 自然にだ、彼の目から。
「涙が出てきますね」
「そうした方が多いです、ここに来られた方には」
「わかります、この人達がいてくれたからこそ」
 目は日の丸から離れない、そのうえでの言葉だ。
「僕達もいるんですね」
「その心がここにあります」
 自衛官は何度も観ているせいか涙は流していない、だがそれでも深い感動を以て彼にこう話すのだった。
「この日の丸にも」
「そうですね、僕は今日のことを忘れないです」
「そうしてくれますか」
「忘れたくても忘れられるものではないです」 
 そこまで深いものがあるからだ。
「絶対に」
 彼はこう言ってだった、暫くその日の丸を観続けたのだった。英霊達が残した日
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