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沈む太陽
第一章
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                 沈む太陽
 その戦艦を送る時には誰もがこう言った。
「勿体ないか、日本相手には」
「プリンス=オブ=ウェールズを送ることは」
「それでもあれを送っておけばアジアは安泰だな」
「ああ、日本軍なんか相手じゃない」
 ロイヤルネービーの面々はこう確信していた、首相であるチャーチルもだ。
 彼の大好物であるハバナ産の葉巻を吸いながら悠然として言い切った。
「あの戦艦とレパルスだけで充分だ」
「日本相手にはですね」
「そう、安心していい」
 こう言うのである、葉巻の味を楽しみながら。
「むしろやり過ぎたか」
「日本も戦艦を持っていますが」
「全て旧式だ、大したことはない」
 金剛やそうした戦艦を念頭に置いての言葉だ。
「大和とかいう馬鹿でかい船もだ」
「敵ではありませんか」
「あの戦艦は我が大英帝国の最新鋭の戦艦だ」
 七つの海を支配するイギリスのだというのだ。
「我が国の技術の粋を尽くした、しかも既に実戦の経験を積んでいる」
「ビスマルクですね」
「あの時はつまづいたがね」
 ビスマルクの砲撃でダメージを受けた、しかしそれがかえってだというのだ。
「いい経験になった、それならだ」
「日本軍相手にはですか」
「尚且つ動かすのはロイヤルネービーだ、極東の小国が適う相手ではない」
 この時代のイギリスから見れば日本は所詮その程度の相手だった、チャーチルは様々な要素から安心しきっていた。
「まあ戦争になってもアジアは大丈夫だ」
「制海権は奪わせませんね」
「日本に何が出来る」
 こうまで言った。
「あの戦艦もロイヤルネービーも大英帝国もだ」
「これからもですね」
「我が国は沈まない」
 決してだというのだ。
「大英帝国はこの戦争にも勝ちそれからも世界の盟主であり続ける」
「これからもですね」
「永遠にな、あの戦艦が決して沈まない様に」
 ロイヤルネービーが不滅である様に、チャーチルは豪語した。
 だからこそだった、この提案にもこう返した。
「航空母艦は東方には送らないですか」
「ああ、いい」
 右手を横に振って素っ気なく返す。
「プリンスオブウェールズとレパルスだけでな」
「その二隻があればですね」
「空母はいらない、プリンスオブウェールズだけで充分だ」
「では空母はアジアには送らずに」
「戦艦だけでいい、そもそも空母も艦載機もな」
 そうしたものもどうかというのだ。
「安定さに欠ける、信用できない」
「あくまで海は戦艦ですか」
「ずっと変わらないことだよ、これまでもそうだったじゃないか」
 チャーチルはこのことにも確信を以て言う。
「戦艦こそが海の主役だよ、空母はいらない」
「では」
「空母はいい」
 チャーチルは自分の口で正
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