暁 〜小説投稿サイト〜
私立アインクラッド学園
第二部 文化祭
第23話 ずるい君

[8]前話 前書き [1]後書き [2]次話
「………」

 俺は無言で立ちつくしていた。
 下駄箱に、一通の手紙が入っていた。ハートマークのシールで封してある。

「……これってもしかして」

 ちょっと古いとは思うけど、アレじゃないだろうか。ほら、アレ。アレだよアレ。アレったらアレ。
 恐る恐る封筒を開けると。

「ッ!?」

 ──なんでカッターの刃先が入ってるんだ。
 俺の指から血が流れた。

「なんだこいつ……」

 こういうの、なんていうんだっただろうか。ヤンデレ?
 便箋も一応入っている。文面を読む。
 ──これって

「……果たし状かよ」

 ──いや別に悲しくなんかないし。俺人生ソロプレイヤーだし。そもそも俺がこういうの貰いたい相手とかひとりだけだし……って何の話だ。
 俺はアホみたいにひとりツッコミをした。
 よく読んでみると、あることに気づく。なんか知らないけど、『僕の閃光様に』とか『お前絶対殺してやる』とか物騒なことが書いてあった。
 ──アスナファンの方か。

「……できるものならやってみろ」

 俺は呟き、手紙をくしゃっと丸めて放り投げ、校舎を出る。
 ──この日はすっかり油断していた。

 **

「キリト君……」

 先日の調理実習で、和人にとんでもないことをしてしまったことを思い出す。
 ──綺麗だなぁと思いますよ。
 ──可憐さを褒めたつもりなんだけどな。
 和人の言葉ばかりが、明日奈の脳を支配する。

「……ずるいよ」

 和人はいつも、少しはにかんであんなことを言う。
 明日奈がこうして授業中に顔を伏せるのは初めてだった。ななめ前の席に座る和人は、頬杖をつきながらホログラフィックの教科書のページを繰っている。
 和人が見せる笑顔は、きっと他の子にも見せている。
 ふいに和人と眼が合う。和人が優しく微笑む。
 ──そういう表情、ほんとにやめて。
 ──君にとって、わたしは、そんな存在じゃない。解ってるのに……期待してしまうから。

「……キリト君のばか」

 ボソリと言うと、和人は傷ついたような顔をして、「またバカって……」と呟いた。

[8]前話 前書き [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ