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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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「では次はユヅル君だ」
「え……っあ、はいっ! い、いとめユヅルです」

 どもりどもり喋る彼に、りらーっくすりーらっくす! とハッカが白い歯を見せる。だから緊張するんだろと突っ込みたくなった。

「嫌いなものも好きな言葉も特技も夢もなくて……正直何の取り得もないような奴だし、それにどうして卒業できたかわからないくらいなんだけど……よろしくお願いします」

 黒い長袖のTシャツの上に白無地の半そでのTシャツ、膝丈より少し下あたりの黒いズボンと、簡素な恰好だ。額当ては首に緩く巻いている。全く額宛てとして使われない物体だ。

「で、最後にマナくんだ」
「ほいほーい。マナでーす。名字は言うまでもねーかな? だってアタシの名字結構インパクトある読み方だっただろ? 好きなものは食べることだ。嫌いなことは食べれないこと。好きな言葉はもらう、いただく、恵んでもらう、いただきます、無銭飲食、拾い食い、棚からボタ餅。特技は早食い、趣味は食べること。夢は金持ちになって食いたい放題だ! ふっふふー」

 ニタつくマナにユヅルがずささささっと後ずさった。はじめが僅かに距離を置き、ハッカが溜息をつく。そんなマナの額宛てはやはり額宛てとして扱われず、ホルスターの上にまきつけられてある。

「あ、こいつ苺大福ね。赤丸の兄弟だってよ」
「わん!」

 ハッカはつい先日会ったばかりのツメの言葉を思い出した。ツメはマナに、紅丸という名の犬を贈ったといっていたが――苺大福とは。流石狐者異、思いつつ再び溜息をついて、ハッカは口を開いた。

「さて、まあ一通り自己紹介が終わったところで、二次試験の説明でもさせていただこうか――」

 +

「鈴取り合戦? ……なんだそれ。合戦つっても食べ物奪うんじゃないんならアタシやる気でねーぞ全く」
「いや、そんなことをしてしまったら百二十パーセントの確率でマナ、お前が勝ってしまう」

 移動した先は演習場だ。
 先ほどハッカが説明してくれた二次試験の内容は、アカデミーの卒業生を鈴取り合戦とやらで更に絞るという話だ。分身の術だけで卒業とは甘すぎると感じていたらしいはじめは納得し、ユヅルは顔を曇らせ、マナは奪うのが食べ物でなく鈴であるということに不満を抱きはじめる。
その試験の内容とは大体こんな感じだ。
音をならせないように綿をつめた鈴の入った三つの小箱に封印術を施して三人にわける。その中の箱で一つだけ、鈴が入っている。鈴なき者は鈴を奪い、鈴ある者は鈴を隠し、十二時までにその鈴を所有していた者を卒業させるということなのだ。
 
「では、この三つだ。いくぞ!」

 “朱”、“藍”、“翠”――そうかかれた小箱が手渡される。朱がユヅル、藍がマナ、翠がはじめだ。

「では、開始!」

 +
 

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