第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十 〜愛の狭間〜
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を覚えさせ、意のままに……という事だ。
「何処までも腐りきった奴ですな……あの男は」
「ああ。だが、奴はもう処罰を受けている。あのような目に遭う事は二度とあるまい」
「……そ、それと……」
「まだ何かあるのか?」
「このお礼もあります……」
耳まで真っ赤になりながら、徐庶が差し出したもの。
「これは……主の羽織ではありませぬか」
「……そうか。あの時の少女は、お前であったのか」
「……はい」
蔵に踏み込んだ時、何人もの少女が裸体のまま、囚われていた。
見かねて、手近にいた一人に、この羽織を着せた覚えがある。
「これ、きちんとお洗濯してありますから。……本当に、ありがとうございました」
「うむ。ところでお前は、これからどうする?」
「え?」
「旅の道中である事は聞いた。再び、旅に出るつもりか?」
「…………」
徐庶は、少し考えてから、
「……太守さん。お願いがあります」
「私に?」
「はい。わたしを、使って下さいませんか?」
そう言って、頭を下げる。
「仕官する、という事か?」
「はいっ!……わたしの事、ご存じみたいですけど……これでも、軍師として一通りの事は、学んできたつもりです。きっと、太守さんのお役に立てるかと」
徐庶の眼は、真剣そのものだ。
「司馬徽門下であれば、私ならずとももっと大身の許に仕官も適うであろう。それに旅とは、仕えるべき者を探すものではないのか?」
「仰る通り、旅をしながら、このわたしを役立てて貰える方を探していました。わたしは、自分の栄華は求めていません。既に身分のある方かどうかは関係なく、徳と、仁を備えた方にこそ、お仕えしたい、そう思っているんです。太守さんは、少なくともわたしが探し求めていた方、そう確信しています」
「本当に良いのか? 私が、お前の理想とする者かどうか、見定めるには性急に過ぎるやも知れぬぞ?」
「いいえ。太守さんの事、いろいろと調べさせていただきました。……不思議な方ですけど、わたしの求めていた方でもあるって。ただ、いきなり仕官を求めても断られるかも知れない……だから、今日はお礼だけのつもりだったんです」
その言葉に、嘘は感じられぬ。
「唐突で失礼なのは承知しています。でも、どうか。お願いします!」
ただ、必死である。
「ふむ。主、如何なさいますか?」
「星はどうなのだ?」
「主のお決めになる事、私はただ従うまでです。ですが、この者の言葉、真のものかと」
「……よし。いいだろう」
すると徐庶は、いきなり抱き付いてきた。
「ありがとうございます!」
「こ、これ。落ち着かぬか」
「……あ。す、すみません!」
慌てて飛び退き、何度も頭を下げた。
「
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