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銀河英雄伝説〜悪夢編
第六話 そんな事を言ってるんじゃねえよ!
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ましたからね。ですがどういうわけか私も二階級昇進しました」
「それはそれは……」
女官が首だけを回して俺を見た。穏やかな笑みを浮かべている。……妙な感じだな、ただの好奇心じゃないようだ。

「失礼ですが貴女をここへ寄こしたのはどなたかな?」
「さあ、それは……」
また女が笑った。
「軍人ですか?」
「……いいえ、違いますわ」

なるほど、リヒテンラーデ侯か……。どうやら俺とラインハルトの関係が気になるらしいな。それでこの女を使って俺に探りを入れに来たか……。皇帝の寵姫の弟、微妙だよな。軍ではまだ少将だがこれから出世すれば厄介な存在になる、そして協力者が居れば……。

「この先の突き当たりを右に御曲がり下さい。そのまま進みますと奥に部屋がございます。そこで皆様がお待ちでございます」
「有難うございます」
礼を言って先に進む。突き当たりを右に曲がる時、さりげなく来た方向を見ると女官が丁寧に頭を下げるのが見えた。

指定された部屋は何とも薄暗い部屋だった。五メートル四方程の部屋に四人の男が居た、軍人が三人、文官が一人。予想通りだ、帝国軍三長官とリヒテンラーデ侯、どいつもこいつも不機嫌そうな表情で疎らに置かれた椅子に座っている。“座ってくれ”とミュッケンベルガーが言ったから一礼して適当な所に座った。

「来て貰ったのは他でもない、あの老人の件だ」
ミュッケンベルガーが“あの老人”と言った。口調が苦味を帯びている。どうやら調整は不調だったか……。予想通りだが気が滅入った。
「どうも上手く行かぬ、そこで卿の考えを聞きたい、そう思ったのだ。不本意ではあろうがな」
「……」

その通り、不本意だ。分かっているなら俺に振るな。お前らがあの爺さんの首に縄を付ければ済む話だろうが。俺が押し黙っているとエーレンベルクが口を開いた。
「陛下にお願いする事も領地の件も上手く行かぬ。あの老人の処遇が決まらねば今回の戦いの総括も賞罰も出来ぬ。身動きが取れぬのだ」

泣くなよ、全く。泣きたいのは俺の方だ。
「陛下へのお願いは何故駄目なのです?」
皆がリヒテンラーデ侯に視線を向けると侯が顔を顰めた。
「別に寂しくないと仰せでの。正直に卿らの苦衷を訴えたのだが勝っているのだから問題あるまいと。残り少ない人生、好きにさせてやれとの仰せだ。……少々鮮やかに勝ち過ぎたの」

嫌味か、このジジイ。他人事みたいに言いやがって。勝たなきゃ負けるだろう、どれだけの犠牲者が出ると思っている。残り少ない人生だから好きにさせてやれ? 俺の人生の方が残り少なくなりそうだ。敗北か、或いは疲労か、目の前に死神が迫っている気がするよ!

「領地は如何です?」
ジジイが首を横に振った。
「それも駄目だ。領地は本来他に与えるべき賞が無い時に与えるものだ。元帥
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