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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十六 〜将星、集う〜
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の胆力だぞ?
 照れたのか、真っ赤になって俯く田豊。
「主。そう言えば、袁紹軍が既に、冀州に入っていると聞き及びましたが」
「耳が早いな、その通りだ」
「いえ、出がけに疾風より聞かされまして。詳細は調査の上、判明次第知らせる、との事でした」
「ふう、僕が心配するだけ無駄でしたね。やっぱり、皆さん凄いです」
 苦笑する田豊。
「各々がなすべき事をする、それで良い。今のお前はこの軍の采配を預けている、それに専念せよ」
「は、はい!」
「では主。兵の様子を見て参ります」
「うむ」
 星が出ていくと、入れ違いに兵が入ってきた。
「申し上げます」
「何事か?」
「はっ。韓馥様より、伝令が到着しました」
「わかった、通せ」
「ははっ」
 田豊は、何やら頷いている。
「これも、お前の策だな?」
「いえ、僕じゃありません。恐らくは、沮授の策です」
「ふむ。どうも、お前は沮授と親しいようだが、知己か?」
「知己というよりも、腐れ縁ですね」
 と、笑う田豊。
「幼馴染みなんですよ、沮授は。もっとも、あいつは僕よりも要領がいいから、韓馥様のところで出世していますけど」
「ふむ。参謀兼軍司令官、と申したな?」
「ええ。僕はこの通りひ弱ですけど、沮授は頭が切れるだけじゃなく、前線に出て兵を動かすだけの度胸の良さがありますから」
 いくら親しき間柄とは申せ、この田豊がここまで評するのだ。
 間違いなく、優秀な人材なのだろう。
「しかし、先の黄巾党討伐の際は、姿を見なかったが」
「そうでしょうね。風邪をこじらせて寝込んでいた筈ですから」
「……そういう事か。それで、張コウ殿が、補佐を兼ねていた訳だな」
「張コウ様も、ただの猪武者じゃありませんしね」
 そんな会話を交わしていると、件の伝令が連れられてきた。
「ギョウ軍太守、土方様でございますな?」
「如何にも」
「韓馥軍参謀、沮授よりの言伝です。失礼ながら、口頭にて申し上げます」
「うむ」
 書簡にしなかったのは、万が一賊軍の手に落ちる事を恐れての処置だろう。
 すると、伝令は複数放たれている、そう見て良い。
 手慣れた者でなければ、この配慮は思いつかぬであろう。
「田豊殿よりの手筈通り、準備が整いました。今夜、払暁を持って賊軍に奇襲攻撃を加えます。呼応をお願い致します、との事です」
「田豊、相違ないか?」
「はい。沮授ですが、了承の合図についても伝わっていますね?」
「その点もぬかりはありません」
「わかりました。では、ご苦労様でした。下がってお休み下さい」
「ありがとうございます。では、御免」
 使者が下がると、
「太守様。勝手に話を進めてしまい、申し訳ありません」
 田豊が、頭を下げた。
「采配は預けた、と申したであろう? 必要とあらば
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