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ニュルンベルグのマイスタージンガー
第三幕その二十一
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第三幕その二十一

「僕みたいな誠実な人間を捕まえてそんなことを言うなんて」
「ほらほら、そんなこと言っても」
「女の子達が来ると」
 そしてここで娘達が笑顔で来る。するとダーヴィットもまんざらではない顔になる。
「どうなんだい?」
「心が動かないか?」
「それはだね」
 言い返そうとする。しかしついつい目が娘達にいってしまう。娘達はそんな彼をからかうようにして輪になって彼の周りで踊りはじめる。そんな彼が何か言おうとすると。
「あっ、レーネ」
「いらっしゃい」
「えっ、レーネ!?」
 仲間達の言葉にギクリとした顔になるダーヴィットだった。
「ダーヴィットはここだよ」
「いらっしゃい」
「いや、レーネこれは」
 まだ彼女の姿を見ていないのにしどろもどろだった。
「あれなんだよ。僕はね」
「おいおい、いないって」
「何だよその反応」
 ここで彼等はまた笑顔で言うのだった。
「動じないんじゃないのかい?」
「誠実じゃないのかい?」
「僕をからかっているのか」
「その通り」
 返事はこれであった。
「見てわからないかい?」
「わかるだろ」
「全く。冗談が過ぎるよ」
「冗談でも引っ掛かる方が悪いのさ」
「まあ本当に誠実であり続けたのは認めるけれどね」
「最後の方は少し怪しかったけれど」
 こんなふうに彼をからかっているとであった。ここで。
「あっ、来られたぞ」
「おお、遂にか」
「あの人達がか」
「そうだ、来られた」
 一人の言葉に皆が続くのだった。
「マイスタージンガーが!」
「マイスタージンガーの方々が!」
 岸の方へ顔を向けると船着場にそのマイスタージンガー達がいた。先頭にいるのは橋を高々と掲げるコートナーであった。そのすぐ後ろにはポーグナーがいて他の面々もいる、当然その中にはザックスもいてすぐ後ろではベックメッサーが難しい顔で紙を見ている。その彼等が今到着したのである。
「来られたぞ!」
「今ここに!」
「ザックスさんもおられる」
「ハンス=ザックスさんも」
 マイスタージンガーの中で民衆に最も人気があるのは彼である。なおポーグナーの横には着飾ったエヴァがいる。マグダレーネも一緒である。
「今日もザックスさんはお元気だ」
「それが何よりだよ」
「では皆」
「ああ」
 自発的にそれぞれ顔を見合わせて言い合うのだった。
「そうだな。ザックスさんをだな」
「ここで讃えよう」
「ザックスさんを」
 皆それぞれザックスを見て言っていく。
「目覚めよ、朝は近付いた」
「鶯は楽しげに歌いその鳴き声は山や谷に木霊していく」
「夜は西に沈みいく」
 自然と歌が出て来た。ザックスの作った歌である。
「昼は東に登りいく」
「激しく燃える朝焼けが暗き雲間を破り
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