暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
マザーズロザリオ編
episode1 『魂』の再会
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 俗説によると、世の中には同じ姿の人間……いわゆるドッペルゲンガーという奴が三人いるらしい。勿論、俺はそんなもん眉唾だと思っていた。まあ、「人の代わりなんて誰にも出来ない」と気取っていたわけではないが、流石に同じ人間なんている訳ないだろう、と。

 だが、それは。
 そんな、考えは。

 『彼女』を一目見て、一瞬で吹き飛んだ。

 「んーっ。困ったねー」

 艶やかな髪を靡かせた、美しい闇妖精(インプ)の少女の、その姿を見て。





 「んーっ、困ったねー」

 弾むような元気のいい声に、俺は弾かれた様に振り向いた。
 その声が、俺の脳の奥深い部分……いや、『魂』とでもいうべき部分に、強く響いたからだ。

 誤解のない様に断っておくが、別にこの声が俺のよく知っている「彼女の声」と同じだったわけではない。だからそれは、俺の脳細胞に刻まれた記憶から呼び覚ました訳ではなかった。だからそれは、記憶ではない、それ以外の「何か」が反応した、ということになるのだろう。

 その「何か」というものをなんと呼ぶのかは無知な俺は知らないが……やはり自分では最もしっくりと当てはまるのは、『魂』だと思う。……が、それはひとまず置いておき、とりあえずはなんとも言いようのない直感が、俺を理屈では無く超反応させた。

 「やっぱりさー、」

 振り向いた先にいたのは、一人の小柄な闇妖精の少女。

 正確に言えば、振り向いた先には無数の妖精たちの行き交う雑踏があったのだが、その中で彼女は、まるで……そう、まるで光を纏ったかのように、景色から浮き上がる様に鮮明に俺の視界へと飛び込んできた。

 闇妖精独特の、抜けるような白磁の肌。会話によって目まぐるしく変化する豊かな表情に、可愛らしいえくぼの浮かぶ頬。「困っている」という口調の割に足取りは弾む様に軽く、この『アルヴヘイム・オンライン』を心から楽しんでいることが、俺にはそれだけで見てとれる。

 「っ、き、君っ!!!」

 俺は思わず、声をかけていた。
 咄嗟に伸びた手が、その肩を掴もうと空を掻く。

 そして、一瞬遅れて、現在の俺の状況を認識した。

 ポカンとした表情の闇妖精の少女……ちなみに横で話していた水妖精(ウンディーネ)の女性は明らかに顔が引きつっている。そして雑踏の中でも結構に通った俺の声は周囲の雑踏を鎮めるほどに響き、周囲からの痛い視線が山ほど突き刺さっている。

 やべえ。

 「え、あ、その、すまん、ちょっと、あ、」

 思わず狼狽する。正直俺はこんな「VRMMOの街中で女の子に声をかける」なんて大胆な真似をするキャラとは対極に位置する性格なので、こんな場面の経験など皆無だ。どうするか。一端逃げるべきか、それとも思い切ってナンパ
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