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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
極夜の入り口
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あらし》》。連撃と技後硬直の短さに重きを置いた風刀スキルの中では一撃の重さと攻撃力に優れ、刀身の長さを自由に伸縮させることができる単発技。

 刀身を二倍近くまで伸ばしながら肉薄する半透明の刃に一瞬唖然としそうになるキリトだったが、持ち前の反応速度で我に帰ると、《ソニックリープ》の目標をマサキから蒼風へと変更。襲い来る風の刃を弾きつつ高速でマサキとすれ違う。
 数メートルの彼我距離が開いたところで互いに課せられた硬直から一足先に開放されたマサキは、自身のカーソルの色がそれまでのグリーンからオレンジへと変化しているのに気付いた。見れば、キリトのHPは数パーセントほど減少している。先ほどは急に目標を変えて迎撃したため、ダメージを相殺しきれなかったのだろう。力を込めてなどいないはずの奥歯がギリッと音を立て、苦い唾液が口の中に溢れる。
 マサキは溜まった唾液を一気に飲み下すと、何かから逃げ出すように地を蹴った。



「くっ……」

 水色のライトエフェクトに照らされたキリトの顔が、焦るように歪んだ。凄まじい速度と迎撃のタイミングを外す絶妙な緩急を併せ持った斬撃の数々を、己の持つ最大の反応速度でかわし、そして弾く。だが完全な迎撃には至らず、弾き損ねや身体を掠めていく攻撃にHPが僅かずつ、しかし確実に削られていく。しかも、繰り出される連撃は弾かれた後のことまで綿密に計算されているらしく、カウンターを狙うことすら至難の業だ。

 だがその一方で、キリトは無視できない安堵のような充足感を確かに覚えていた。今まさに迫り来る斬撃は、自分のそれよりも遥かに(はや)く、そして正確だ。恐らく一撃の威力ではこちらが勝っているだろうが、それはあくまで筋力パラメータとそれに付随した武器攻撃力の差でしかなく、筋力型の能力構成(ビルド)ではない自分の場合、捨て身の攻撃でも敢行しない限りそれは決定機にはなり得ない。このままいけば、ほぼ間違いなく、自分は彼に殺されるだろう。

 ――だが、それの何処に問題があろう? 自分は何の罪もない五人を殺した殺人犯だ。そんな輩は同じように殺されて然るべきだろう。そして、そのような無意味な死こそ、血まみれの自分に許された唯一の、また自分が望んだ死に方ではなかったか。
 ――そう。問題など何処にも存在しないのだ。このまま自分が死ねば三途の川の向こう岸で、もし仮に、この後自分がマサキを殺したならば、その時はこのだだっ広い氷点下の平原で、彼女の悪罵を聞くことになる。……本質的には、何も変わらない。ならば、死を恐れる理由もない。

「うおぉぉぉぁぁぁぁっ!!」

 キリトは絶叫と同時に、繰り出される連撃への防御を捨てた。がら空きの身体を切り裂いた一撃がHPをイエローに染めるが、そんなことはどうだっていい。重要なのは唯一つ、こ
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