第13局
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配してくれるのは分かりますよ。でも、きっと大丈夫だと私には思えるんです。むしろ必要な気がするんですよ、ヒカル。
佐為の言葉を受け、じっと考えるヒカルと心配そうに見つめるあかり。
これも今回の流れなのだろうか。
もうすでに、海王進学という、新しい流れに進むことは決めているのだ。
なら、ここでかたくなに拒絶することに意味はあるのか?
―分かった。佐為、1局だけ奈瀬と打ってくれ。ただし、何か嫌な予感とかしたらすぐに中止するって約束してくれっ!
―分かりました。
あかりには佐為の言葉しか聞こえていないが、ヒカルの表情から読み取ったのだろう。
何も言わず、席を空けた。
ヒカルは、あかりの場所に座り、碁石を片付け始めた。
「奈瀬さん、今日だけ1局打とう。」
その言葉に、ハッと顔を上げる奈瀬。
唇を強くかみ締めると、小さくうなずいた。
奈瀬は黒を持った。
あえて置石はなしだ。
奈瀬は、改めて思い知らされていた。
―この子、やっぱり強い!あきらかに全力じゃないのが分かるのに、様子見の手がいくつもあるのに、それでもまったく歯が立たない!
―…あきらめちゃだめだ。あかりちゃんに負けちゃったんだから、もう次はいつ打てるか分からない。必死についていかないと…。
―…でも、なんだろう。間違いなくこの前と同じで強い。強いんだけど…、何か変な感じがするのは何でだろう…。ヒカル君で間違いないよね?
ふと奈瀬は正面のヒカルの顔を見た。
ヒカルの表情は真剣だった。
ただ、なんだろう。
気のせいだろうか、ヒカルの目線に違和感を感じた。
なにか、直接盤上を見ていないような、遠くから見ている目線のような…。
その時、すっと盤上に何かの影が見えた気がした。
えっと思ったときは消えていて、ヒカルが石を打った。
―何か虫でも飛んでいたかな?だめだめ、もっと集中しないと!
だが、何かの影のようなものは、そのあと何度も視界をよぎった。
何かはっきり分からないのだが、どうもヒカルが打つ直前のタイミングで見えるようだ。
ヒカルもあかりも気にしている様子はないので気のせいなのだろうが、何か気になる。
―だめよ、しっかり集中しないと。虫なんかに気をとられている場合じゃないでしょ。相手はヒカル君なのよ!
そう思った次の瞬間、奈瀬は固まった。
さっきまで影のようにしか見えなかったものがうっすらと見えたのだ。
―扇子!?
その扇子が指し示した先に、ヒカルが石を打った。
―え、何今の扇子!?ヒカル君、扇子が指し示す場所に石を打った?
思わず周りを見回すが、今は扇子はどこにも見えない。
「どうした?」
そんな奈瀬の様子にヒカルが声をかけ
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