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剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
第一話 王女と依頼
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 朝。
 教室の中、ルイズは憂鬱な気分で窓から見える青い空を見ていた。
 思い出すのは、昨日見た夢、絶対に唯の夢ではない。
 けれど、あれが何であるか分かるわけもなく、だからといって士郎に直接聞くのもためらわれる……。
 
「はぁ……どうしよう……」
「ルイズ、どうした?」

 ルイズがため息を吐くと、いつの間にか後ろに立っていた士郎が話しかけてきた。
 
「な、何よっ、びっくりさせないでよシロウ」
「あ、ああすまない。しかし、驚かせるようなことをしたか?」
「うっ……いや、その……」

 士郎と顔を合わせたルイズは、目を泳がせながら口を濁らせた。
 そんなルイズを士郎が変な目で見ていると、教室の扉ががらっと開き、ミスター・ギトーが入ってくる。
 生徒たちは一斉に席に着く。ミスタ・ギトーはフーケの一件の際、当直をほっぽり出して寝ていたミセス・シュヴルーズを責め、オスマン氏にからかわれまくった時に、頭を抱えて体を捻らせた際、腰を痛めてしまった教師である。
 長い黒髪に、漆黒のマントをまとったその姿は、なんだか不気味であった。まだ若いのに、その不気味さと冷たい雰囲気からか、生徒たちに人気がない。

「では授業を始める。知ってのとおり、私の二つ名は『疾風』。疾風の―――」

 ギトーが自身の名前を名乗ろうとしたが、それを遮るように、ポツリと誰かが呟いた言葉が教室に響いた。

「キョニュー……」
「「「「「ぷっ」」」」」
  
 続けて

「ビニュー」
「「「「「ごふっ」」」」」

 そして、最後に誰かが大きめな声で呟く。

「貧乳……」
「「「「「っっぶふっ!!」」」」」

 ―――あっはははっはは〜〜〜―――

 教室が爆発したかと思うほどの笑いに包まれた。 

 ―――バンッ!!―――

「わ・ら・う・な・あぁ・あ〜っ!!」

 教壇を思いっきり両手で叩きつけたギトーが教室中を睨みつけた。
 ギトーに睨みつけられた生徒たちは、笑いが漏れる口を必死で手で押さえて、笑いを押さえ込んでいるが、端から空気が漏れる様な笑いが聞こえ、完全には抑え込めていない。
 それを憎々しげに睨みつけたギトーは、気持ちを切り替えるように咳を一つすると話を続けた。

「ごほんっ。では……まず最初に君たちに聞くが、最強の系統は知っているかね? ミス・ツェプストー」
「“虚無”じゃないんですか?」
「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いてるんだ」
 
 いちいち引っかかる言い方をするギトーに、キュルケはちょっとカチンときた。
 
「それなら“火”に決まってますわ。ミスタ・ギトー」

 キュルケは不敵な笑みを浮かべて言い放つ。

「ほほう。どうしてそう思うね?」

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