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第一章〜囚われの少女〜
第七幕『千一夜』
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 ランプに灯った一本の火。その火が消えると一日が終わる――ただ火の消えゆくのを見つめながらその日を終える。そんな夜を何千夜と過ごしたのだろう。
 一本のろうそくは、私の唯一の舞台照明だった。ただその一本のろうそくだけは、暗闇の中で私を見てくれていた。
 凍える夜は指先を温めて、寂しい夜は揺れる火を見つめていた。その火の生み出す影は、数々の物語を生んだ。
 自分に与えられた、ただ一つの光。いつも色々な物語を教えてくれたその光は、一本のろうそくは、今までどれ程の私の支えとなっただろう。しかしそれにも、別れの時がやってくる。


――


 自らをレナと――姫と同じ名を名乗った少女は、最後のその夜を眠れずに過ごしていた。赤いフードの人物にそう告げてから、さらに夜が更けた。明かりはすでに消えている。

 どうせなら、最後は最高の夢を見たい。もしかしたら、今日は何も見れないかもしれない。
 命が尽きた後はどうなるのだろう、永遠に夢の中を彷徨うのだろうか。

 明日は永遠の夢が始まる。どうせ生まれ変われるのなら次は、自由に空を飛べる鳥になろう。それなら命は惜しくない。こんな人生なら、失っても何も嘆くことはない――少女は冷静だった。

 どんな風に終わるのだろう。果たして私は鳥になれるだろうか。未練を残し彷徨い続けるのだろうか。
 明日はどんな最期を強いられるのだろう。民衆たちの晒し物にされ、胴体と首とを切断されて――または木箱に詰められて、無数の剣に刺し貫かれて。そうしてその骸は、見たこともない恐ろしい魔物の餌にされるのか。
 少女は膝を抱え、顔をそこに突っ伏した。死ぬという恐怖を前に、少女は泣いているのだろうか――泣きたいのだろうか。それともそんな感情さえ、もはや消え失せてしまったというのか。自分自身が感情を殺すのは、とうの昔に慣れていた。
(ああ……私が死んで、誰か悲しんでくれますか?)
「誰が」……悲しんでくれる?

 皮肉であるかのような、祈りとも願いとも言えないような事を呟くのだった。誰に言うでもなく、自らを嘲笑う。
 ――思えば。望んですらいないのに生まれることを強いられ、勝手にそれを奪われるなんて。
「何て自分勝手なの?」吐き捨てる。「命とは何ですか?運命とはそこまで勝手な物なんですか!?」天に嘆く。

 少女は嘲笑した。
「ああ、神様……。運命により私を弄び、命を掌で転がし……それで満足でしょうか? さぞ滑稽な事でしょう?こんな姿を見て、お笑いになっていますか?」
――そうだというなら、それも本望。それは、自分に暗示をかけるかのよう。
「せめて――それならせめて、あなた様の涙を下さい」
少女は虚空を仰ぎ、恵みの雨を待ち望む。
「一滴ばかりで構いません。花のように短い人生を演じた私へ、一滴ばかり
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