第四章
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彼女は私に友人、親しいそれとして言ってくれた。
「もう嘘は吐きたくはないわよね」
「ええ」
私は彼女のその言葉に頷いて答えた。
「二度とね」
「嘘は相手を傷付けるだけじゃないわ」
「私もなのね」
「そう、あんたもだから」
私自身も傷付けるものだからだというのだ。
「もうこうしたことで傷付いたらよくないから」
「だから」
「もう嘘は吐かないでね」
「嘘は吐かない」
「そう、相手に対して以上に」
私自身に対して、私にこう言ってくれた。
私も確かにこの言葉を聞いた、そしてだった。
私は彼とまたあのバーで会った、いつもの様に私達は隣同士で飲んだ。そうしながら私はどうしようかと考えていた。
どうすべきか、けれど彼のその彼と同じ顔を見てだった。
横顔も同じだ、けれど彼じゃない。彼はもういない。
それならだった、私は決めた。
「嘘は吐かない」
この言葉を出してだった、私は言った。
「今日までなの」
「今日までって?」
「私がこの席に座るのは」
それまでだというのだ。
「今日までよ」
「そうするんだ」
「そうよ。この席にはもう座らないから」
「そう。じゃあ俺は」
彼と同じならこう言う筈だった、その言葉は。
「この店には来ないよ」
「そうするのね」
「ええ、そうするからさ」
こう言った。そしてその通りに。
彼は今飲んでいるモーゼルを飲み干してから言った。
「それじゃあね」
「さようならね」
「そうなるよ」
彼は私に同じ微笑を見せて店を出た。それで終わりだった。
何もかもが終わってからだった、私は携帯にメールを入れた。
少し経って彼女が来た、そのうえでこう私に言ってきた。
「終わらせたのね」
「嘘は吐かなかったわ」
こう隣、私の左の席に来た彼女に答えた。
「それはね」
「そうなのね」
「彼は彼であの彼じゃないから」
だからだった。私は彼にも自分にも嘘を言わなかった。
そのことを彼女に告げてこうも言った。
「じゃあ今からね」
「私と飲むたいのね」
「寂し紛れっていったらそうなるけれど」
自分でもこのことはわかっていた。けれどそれでも言った。
「正直に言わせてもらうわ」
「ここで嘘を言ったら帰ってるところよ」
微笑んで、こう返したのが彼女の返事だった。
「それじゃあね」
「何を飲むの。それで」
「ブランデーよ。いつも通りね」
「そう。じゃあ私も」
「今日はとことんまで飲むわよ」
「楽しみにしてるわ」
二人で笑顔で言葉を交えさせてそのうえでそのブランデーを飲みだした、私はそのブランデーで嘘を流した。そして次の日から。
彼のことは忘れられないけれど心の片隅に置いて今いる人を見ようと決めた、もう二度と嘘は吐かないと
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