第五十三話 エル・ファシル公爵
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
宇宙暦 799年 8月 3日 ハイネセン ユリアン・ミンツ
帝国軍が一昨日、声明を出した。自由惑星同盟が完全に滅亡した事、今後は銀河唯一の統治国家は銀河帝国である事、そしてこれまで反乱軍の名称で呼ばれていた自由惑星同盟の存在は正式にこれを認める事……。つまり過去の同盟は認めるけれど今後はその存在を認めないって事だ。ローエングラム公って結構皮肉がきついよ。
それと帝国は同盟市民が保有していた財産は保障するという事も発表した。国債や年金も保障される、ヤン提督も有難い事だと言ってる。でも一番驚いたのはエル・ファシル公爵の事だった。エル・ファシル星域を公爵領としてそこでは民主共和政を認めるだなんて。
それにエル・ファシル公爵は世襲じゃなくて公爵領の人間が選ぶ事を認められてるし帝国第一位の貴族、無任所の国務尚書として帝国の統治に参加する事になっている。ローエングラム公って民主共和政に好意的なのかな。ちょっと不思議な感じがした。
ヤン提督にその事を言ったら苦笑していた。
“上手いやり方だね、否定するのではなく取り込んでしまう。これでは誰もローエングラム公が民主共和政の弾圧者とは非難できなくなる。実際には同盟を滅ぼしたのはローエングラム公なのにね”
“エル・ファシル公爵は帝国の統治にも関与する。帝国が悪政を行えばその責任の一端はエル・ファシル公爵にも有るという事になる。旧同盟領の人間が帝国の悪政を機にエル・ファシル公爵の元に集合する事はないだろうね”
そういう事なんだ、って思った。
エル・ファシルで民主共和政が存続するという事でエル・ファシルへの移住を希望する人が現れている。でもエル・ファシルは移住を認められるのは二百万人までだって声明を出した。それ以上は社会資本が整備されていないから受け入れられないらしい。次に受け入れが出来るのは社会資本が整備された時、二年か三年後になるだろうって発表している。
この事については同盟市民は皆エル・ファシルを酷く非難している。でも現実に受け入れられないからどうしようもない。マスコミもこの件については諦めモードだ。それよりマスコミが非難しているのは受け入れの二百万人についてだ。
受け入れの二百万はエル・ファシル政府が移住希望者の中から選抜するらしい。マスコミは移住希望者を差別していると非難しているけどエル・ファシル政府はエル・ファシルを効率良く発展させられる人材を受け入れないと二年後、三年後の受け入れがスムーズにいかないと反論している。
でもこれって結構厳しい。移住希望を出して受け入れられなかったらお前はエル・ファシルの発展には必要ない人間だって言われてるようなものだ。絶対不満が出るよ。ヤン提督はその事もエル・ファシルで民主共和政を許しても帝国の不安定要因にな
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ