第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
鋼の虚構
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大陸有数のラグナイト鉱床が眠るガリア北部の都市、ファウゼンは一次侵攻、二次侵攻の際に帝国軍が最優先で攻略した鉱山基地である。峡谷と標高の高い山に囲まれた部分に司令部を築くしかないため防衛が用意でなく、ガリア戦役ではベルホルト・グレゴール将軍が立案した装甲列車エーゼルによる長距離砲撃をもってしてようやく防衛に成功するレベルだ。
それまでは単線であった鉱山鉄道は複線になり、旧来のスメイク・アインドン方面から伸びる路線に加えてヴァーゼルからメッペル経由で敷設された2本がファウゼンで生産された上質のラグナイトを輸送するここさととなる。
しかし、この複線が通る鉄橋が占領され、北部戦線への補給路は西東双方とも失われる。敵に潤沢な資源を与えないためにも、この鉄道を解放することは急務であると言えよう。
戦車を格納する車庫に集まった義遊軍第5中隊第2小隊と『ヴェアヴォルフ』の隊員総勢30名に満たない。義遊軍からも殉職者が出たようで、兵士の顔は沈んでいる。
「オラトリオ鉄橋奪還の辞令が下された。今回はこの人数での攻略となる。まず、鹵獲した帝国の野戦砲を基地の横腹に撃ち込む。反撃が来ても暫くは砲撃を継続、敵部隊が出てきたところを本隊の総攻撃で叩き、勢いを維持して内部に突入する。質問はあるか」
『ヴェアヴォルフ』の隊員はあからさまに不機嫌な表情をしている。しかし義遊軍は不機嫌どころではなく、1個小隊ほどの歩兵と3門しかない野戦砲、1台だけの中戦車での再攻略に尻込みしてしまっている。
「あの……正規軍は……?」
義遊軍兵の1人がおずおずと訪ねた。戦力の中心にあるはずが、この場に青い軍服が全く見当たらないのだからそれも当然のことだ。アンリはつとめて淡々とした態度を崩さない。
「彼らは後方でメッペル基地の防衛に専念する。本作戦は君たち義遊軍と我々のみで行われることになる」
「たった1個小隊じゃ無理ですよ! あっちは何台戦車があるか分からないのに!」
「そうだ! 特攻なんて御免だぞ!」
次々に飛び出す不平不満にアンリは怒鳴ることはなかった。義遊軍は正規軍の数を補うために集められた付け焼き刃の存在だ。反帝国主義のテロリストや恩赦目当てに志願した凶悪犯でもなければ、戦力としては心許ないことこの上ない。
当の義遊軍兵にしても正規軍と第一線に立つのが理想であり、今回の作戦は受け入れがたいはずだ。
「私は部下を死なせないよう作戦を立てている。そもそも帝国軍にとってヴァーゼルに近いメッペルは目の上の瘤のはずだ。逃げ場もなく、迂回して攻めるのも渡河を目的としたオラトリオ鉄橋の地理を考えれば非効率だ。帝国には列車砲があるが、鉄橋でそんなものは的にしかならない。ならば出来るだけ戦車を見せつけて威圧するのが最善だ。現に正規軍の司令官
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