暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第70話 王の墓所
[1/14]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 我を知る者は、きっと我を見出す事だろう。
 そうだ。例え無意識の内で有ろうとも、我に仕える者は、きっと我を招き寄せるのだ。



 十月(ケンの月) 、第三週(エオローの週)、虚無の曜日。

 虚無の日の礼拝が行われているはずの、リュティス北部郊外に有る教会。
 その荘厳な、と表現すべき建物の尖塔部分と、晴れ渡った秋に相応しい蒼穹を見上げる俺。そして、その傍らに静かに立つ紫の髪の毛の少女。
 但し、残念な事に、俺の心は、この蒼穹と同じように爽やかな、と表現出来る気分などではなく、
 そして、傍らに立つ少女は、その神聖にして荘厳な建物をその瞳に映したとしても、普段通り、何の感情の色も浮かばせる事は有りませんでした。

 そんな俺たちの周囲を秋独特の物悲しい雰囲気の風が、神を讃える歌を微かに伝えて来て居ました。
 俺と、彼女には関係のない世界の歌を……。

 ここは司教座……つまり、リュティスのブリミル教の中心が置かれて居る教会と言う訳ではないのですが、とある事情により、ロマリアの教皇により一般の教会とは違う、一段階高い位の教会として定められた教会。
 ゴシック建築の基本。尖ったアーチや、飛び梁。そして、その結果それまでの建物よりも大きな窓を取る事が可能となった事からより精緻で、大きな物を飾る事が可能と成ったステンドグラスに彩られた寺院。
 おそらく、このガリアでもトップクラスの格式を持つ教会でしょうね、ここは。

 そう。ここは、他のガリア国内には存在しない、ガリア歴代の王たちの墓所が存在しているブリミル教の教会。

 そして、ここの一角には、オルレアン公シャルル……つまり、タバサの父親の王墓も存在していました。

 但し、いくらジョゼフが弟の無実を信じて居たとは言え、つい最近まで謀反人の汚名を着せられていた人物を、歴代の王が眠るこの地に埋葬する事が限界で、流石に、他の王のような大聖堂の地下に広がる空間に、ビロードに包まれた豪奢な棺に納められた状態にする訳にも行かなかったようです。

 何故ならば、

 その、周囲に一切の墓すら存在していない教会の敷地の裏手。其処に存在する名前すら記されていない御影石らしき石碑。其処が俺と湖の乙女の目的地。いや、厳密に言うと、その石碑の後ろ側、なのですが。

 ただ……。
 ただ、よく晴れた秋の日に相応しくないその墓場独特の湿り気を帯びた空気が、俺の気分を更に陰鬱な物へと移行させ、これから確認する内容が、それ以上に気分と、自らの歩みさえも重い物へとさせていたのは間違いない状況。
 はっきり言うと、このまま回れ右をして帰りたい気分と言えば判り易いですか。

 そして……。
 其処。何者の墓とも知れないその場所の裏手には、墓の内部に通じる鋼鉄製の扉と、それを
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ