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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第69話 シャルロット
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 ゆっくりと開かれる扉。
 その先に広がって居たのは……。

 暗い室内。部屋のサイズはおそらく十畳以上。一方の壁一面に設えられた巨大な書棚がその部屋の主の嗜好を示し、大きく開け放たれたバルコニーに面した窓から差し込む月の光りが、部屋の中心よりはやや入り口寄りの辺りまでを、蒼い明かりで照らし出す。

 そして……。

 そして、そこから入り込む秋の風が、彼女の寝台の紗のカーテンをそよがせた。

 そう。部屋の中央部よりは、ややバルコニーに近い位置。其の場所に配置された、月の光りに蒼く染め上げられた紗のカーテンに覆われる豪奢な寝台。
 其処には……。

 いや、その紗のカーテンを開く必要など有りませんか。その寝台に眠るこの部屋の主は、俺の良く知って居る少女に間違い有りません。
 何故ならば、薄らとでは有りますが俺からその寝台の上。薄い紗のカーテンの向こう側にまで伸びている、因果の糸が見えて居ますから。



「あなたは、誰?」

 刹那、月の光に支配された蒼い世界に現れた人影。
 逆光に照らされたその人物から、聞き慣れた……妙に記憶の奥深くを刺激する涼やかなる声が発せられる。

 その人物。髪型はかなり短いショートボブ。色は月光のみが支配する世界なので非常に判り難いのですが、おそらく蒼。
 俺が視線を彼女に向けたその時、紅いフレームのメガネが普段通り冷たい月の光を反射する。魔術師の証の黒のマントを五芒星で象ったタイピンで留め、その内側は白のブラウスに黒のミニスカート。
 表情は彼女に相応しい、感情を表す事のない透明な表情。
 蒼い月の光りにより、その姿は普段の彼女よりも数段、儚く、そして美しいものに俺には感じられた。

 ここまでは俺の良く知って居る彼女と同じ部分。

 そして、ここから先が俺の大切な少女との違い。
 見覚えのある右手首を飾る銀の光が、紅い夢の世界で出会った少女が彼女で有る事の証。
 最後に、繊細な印象を受ける両の手が大切そうに抱える人の頭骨が、その少女の存在が異質な存在だと教えていた。

「俺は、この夢の主で有る少女の相棒。そして、眠り姫を叩き起こす為にやって来た、喧しい目覚まし時計代わりの存在かな」

 俺は新たに顕われた少女。おそらく、タバサの双子の妹らしき少女の問いに対してそう答えた。
 その少女が俺を真っ直ぐに見つめる。その視線も、そして表情もタバサと同じ物。まして、その両の手が抱えている不気味な物体が存在しても尚……。

 月下に佇む彼女の姿は、哀しいくらいに美しい物だった。

 ここは夢の世界。更に、俺は見鬼の才に恵まれた人間。
 精神の在り様がそのまま実際の姿として見えるはずのこの夢の世界で、タバサの双子の妹の姿がこの上なく美しい姿に見えて居ると言
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