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後宮からの逃走
第二幕その四
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第二幕その四

「早くお知らせしないと」
「そう、すぐにでも」
「笑いながら冗談交じりに」
 完全に喜びで有頂天といった有様のブロンデだった。
「あの方のくじけそうになっている御心に喜びと幸せを」
「いやいや、待て」
 ここですぐにコンスタンツェを探しに行こうとするブロンデを呼び止めるペドリロだった。
「まだ逃げ終えたわけじゃないぞ」
「それはわかってるけれど」
「これからが勝負なんだよ」
 一転して真面目な顔になって言うペドリロだった。
「のるかそるかってね」
「そうね。確かに」
「しり込みすれば負け」
 こちらも一転して真面目な顔になったブロンデに告げた。
「ただやるだけだ」
「そうね」
「これは戦だ、武器を取るんだ」
 威勢よく告げる。
「臆病風は無用だ。震えてはいけない」
「ではどうするの?」
「命をかける」
 これしかなかった。
「潔く体当たりだ」
「では早速私がまず」
「健闘を祈るよ」
「ええ、それじゃあね」
 ここまで言って別れる二人だった。するとブロンデと入れ替わりにまたオスミンが庭に出て来た。そうして忌々しげにペドリロを見て言うのであった。
「何がそんなに楽しいんだ?」
「いや、ワインを飲んでね」
「ワインだと」
 ワインと聞いてすぐに顔を顰めさせたオスミンだった。
「全く。奴隷はそのようなふしだらなものばかり飲む。やはりムスリムはだな」
「とりあえず飲んでそれに溺れ過ぎなきゃいいんじゃないのですか?」
「むう」
 実はそうなのだった。イスラムでの酒への考えはその時代や地域によってかなり違う。この時のこのチュニジア近辺では結構緩やかだったりする。
「それはそうだが」
「ではいいじゃないですか。ほら」
 早速ワインのボトルを二本出してきた。
「どうですか?一本」
「馬鹿を言え」
「ですから気持ちを落ち着けられて」
「わしはムスリムだが」
「アッラーよお許しを」
 真面目な動作になってアッラーに謝罪してみせたペドリロだった。そのうえでまたオスミンに対して述べるのだった。動きが実に早い。
「こうして貴方にかわって謝罪しましたよ」
「だから飲んでもいいというのだな?」
「はい、ですからどうぞ」
 そのボトルのうちの一本を彼に差し出すのだった。
「どうぞ」
「毒なんか入ってはいないだろうな?」
「はいっていたら私は今頃死んでいますが?」
 実際にここで今自分が持っている方のワインを飲んでみせる。一向に平気である。
「ほら、そうでしょ?」
「むう。そうだな。それでは」
「はい、どうぞ」
「わかった。アッラーよ、お許しを」
 彼自身もアッラーに謝罪してからペドリロからボトルを受け取り飲む。一気に飲み干した。流石に身体が大きいだけあって
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