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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第二八幕 「母の愛した愛し子よ」
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前回のあらすじ:病弱少年、抱かれる


外出許可、それは別れし者との束の間の再会。
外出許可、それはかの者が待ち望みし至高の許可。
外出許可、それは長く短い自由への逃避。
外出許可、それは・・・・・・







そこは何処までも広がる山々が連なる、とある田舎町の一角。今は誰も住んでいないその家屋の庭に、大きな墓石があった。
そこには「残間家乃墓」と大きく掘られており、裏にはこの墓で眠る残間家の人々の名が刻まれていた。そしてその中に・・・

「ただいま、母さん」
「・・・ごめんな?色々あって、随分長い事来れなくてさ」

今は亡き二人の兄弟の母親、「残間美夕起(あさまみゆき)」が名を連ねていた。

「母さん。僕たち、IS学園に行くことになったんだ。周りが女の子ばかりで気苦労することも多いけど、みんないい人だよ」
「まぁ悪い人がいたら俺が守ってやるだけだから問題ないがな!母上は化けて出ずにゆっくり眠ってていいぜ?」
「もう、兄さんったら・・・とにかく、僕たちは今日も元気でやってるよ」

それは死者に対する意味のない報告。ただ生きている人間が物言わぬ死者を悼んで一方的に行う自己満足行為。
それでもここでこう話していると、先立ってしまった母との時間が少しだけ埋められるような気がして、彼らは定期的に墓参りをしている。本当は父と共に来たかったが、人格保護プログラムの所為で連絡もあまり取れない父とスケジュールを合わせるのは無理があったため、今回は二人だけだ。

「・・・線香、立てていくか。ユウ、ロウソク出してくれ」
「はい、ロウソク。少し風が出てるから火の扱いに気を付けてね?」

ロウソクに火をつけ、その火で線香に火をつける。最早嗅ぎ慣れた線香の香りを気にすることもなく香立ての灰に突き刺し、二人は静かに合掌した。







残間美夕起という女性について、ユウの知ることは少ない。何故ならば彼女は10年以上前に亡くなっており、顔や声、優しかったという断片的でぼんやりとした形でしか記憶していなかった。社会的にどんな人物だったのかは全く知らなかった。
だから彼女が死んでからというもの、ユウは母についてどれだけ無知であったかを思い知らされた。
母の仕事を知らない。母の友達の顔を知らない。母が何を思い自分に結章という名をつけ、成長する息子をどう思い、死に際にどう思っていたのかはもはや知るすべもない。

まだ幼稚園児だったユウにとって、母の訃報は余りにも突然だった。
死因は高速道路での交通事故。出張の帰りに運悪く大型トラック二台にサンドイッチにされた母の遺体は損傷が激しく、遺体を拝むことは父に許してもらえなかった。だからだろうか、当時のユウには全く母が死んだという実感がわかなかった。だが
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