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季節の変わり目
悪夢

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 今よりずっと小さいヒカルの姿が私の前を歩いていた。歳は12くらいの、非常に可愛らしい子供だ。何度も振り返って、私に話しかけてくる。それにしても、ここはどこだろう。私の視線はふと横にある水槽に向いた。間を置かずに、私はやけに興奮してヒカルに話しかけた。

「あーっ、ヒカル、これ前にも見たニセモノの魚ですよっ。ねえヒカル」

ヒカルは一度立ち止まると佐為に呆れたように「お前な」と呟き、行くぞ、と私に構わず先を進む。

「ヒカルったら!」

その水槽の横の碁盤が去り際に目に入って、ここは囲碁に関係のあるところだと考えた。ヒカルの後ろについて建物の奥へと進むと、事務室のようなところへ出る。ヒカルは七三分けの中年男性に「すいません」と声をかけ、カウンターに呼び出した。

「院生試験ならもう締め切ったよ」

院生試験?

職員の答えとほぼ同時に、ヒカルは「えー!?」と驚く。「また来なさい」とヒカルをなだめる職員に、ヒカルは勢いよくまくしたてた。言い争いが続く中、そこに金髪の、しかも白スーツという柄の悪そうな男がこちらに向かってくる。男はヒカルの顔をじっと見ると、次に、ヒカルの相手をしていた職員に便宜を図り始める。職員は仕方なくヒカルに書類一式を渡すと、それについての説明を始めた。すると男は今まで見向きもしなかった私に目を合わせ、スーツのポケットからタバコを取り出し、くわえる。その先端に手慣れた様子で火をつけると、呪文のように言葉を繋いでいく。

「saiは伝説だ。俺はお前をずっと探していた。」

「俺に打たせろ!」

突然男が私に掴みかかり、私はバランスを崩し床に倒れる。男の胸板を抑えようにも、私の腕は力を無くしたかのように、男はびくともしなかった。ヒカル、ヒカルと声の限り叫び続けるも、ヒカルの声は聞こえてこない。もう体力も限界な頃、私は抵抗するのを一気にやめた。



「はっ」
目が覚めて、すぐに私の夢だったことに気がついた。体中が汗でべとべとしていて、パジャマにはりつく。それにしても、気持ちの悪い夢だった。すぐにベッドから起き上がるとおぼつかない足取りで一階への階段を手すりを使って降り、リビングへと向かう。まだ誰も居ない暗いリビングに明かりをつけると、すぐに冷蔵庫から冷えた麦茶のペットボトルを取り出しコップに注いだ。ごくごくと勢いよく口に含んで深く息をつく。あんな夢を見たのは昨日のヒカルとの会話のせいだ。洗面所へ急ぎ、冷水を何度も顔に打ちつけた。でも、何だろう。既視感を感じてやまないのは、気のせいだろうか。




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