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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第五十話 地ならし
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ただかなければ……。私が結婚を勧めるのもそれを思っての事です」
「そうだな、姉上には幸せになって貰わなければ……」

しんみりした口調だ。お前の良い所だよ、ラインハルト。ただの権力亡者ならアンネローゼを殺すか、道具として利用することを考えるだろう。だがお前はアンネローゼだけじゃない、相手の男の事も考えている。オーベルシュタインなら弱点だと言うだろう、だが俺はそうは思わない。

人を思い遣る心が有って初めて善政が生まれると思う。統治者には必要な心だ。トリューニヒトなんかには欠片も無いだろう、オーベルシュタインと組んだら似合いのコンビだっただろうな。トリューニヒトならオーベルシュタインに汚れ仕事をさせておいて平然と知らぬ振りをしたはずだ。

「キルヒアイス提督が伯爵夫人を想っているという事は有りませんか?」
「キルヒアイス? ……キルヒアイスが姉上を?」
ラインハルトが首を傾げている。俺も鈍いがこいつの鈍さは俺の遥か上を行く。素直に感心するよ。

「伯爵夫人にとって身近な男性というとキルヒアイス提督です。キルヒアイス提督も恋人はいらっしゃらないようですし……」
「……キルヒアイスが姉上を?」
駄目だわ、同じ言葉を繰り返している。こいつの頭の中ではアンネローゼは十五歳でキルヒアイスは十歳のままなのかもしれん。

「もちろん私の勘違いという事も有ります。しかし、もしそうでないなら閣下は反対なのでしょうか?」
「いや、そうではない。ただ姉上からもキルヒアイスからもそんな感じは受けなかったから……」
お前なあ、皇帝の寵姫が好きだなんて言えるか? フリードリヒ四世の死後はお前に遠慮してたんだろうが。おまけにアンネローゼは年上だしキルヒアイスは平民だぞ。簡単にラブラブなんてなるわけ無いだろう。

「お二人と親しい方は居ませんか? 出来れば共通の友人が。それとなく確認してもらった方が良いと思うのですが」
「二人の友人か……。そんな人物が……、いやヴェストパーレ男爵夫人がいたな、夫人に頼めば良いかもしれない……」
ホッとしたような声だ。ようやくここまで来た。覚えの悪い犬に芸を仕込んでいる様な気分だ。

「それは良い方が居られたようで」
「ああ、オーディンに戻ったら頼んでみよう。それにしても姉上とキルヒアイスか……」
まあこれで何とかなるだろう。あとは上手くやってくれ。実際、アンネローゼを一人にしておくのは危険だ。ラインハルトとヒルダが結婚するかどうか、不確定だからな。最悪の場合はアンネローゼが女帝でキルヒアイスが女帝夫君という事になるだろう……。




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