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ソードアートオンライン 弾かれ者たちの円舞曲
第伍話 《真っ黒》〜後編〜
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「くうっ……!」
ナイアの重い剣撃を刃の小さいダガーで受け、吹き飛ばされかけるのを踏ん張って堪える。
シキがナイアの剣を受け止めると、更に棺桶が向かってくる。
「……ッ!」
身体を反転させながら跳び、足を砕かんばかりの勢いで迫ってくる棺桶をかわす。
「甘いですよッ!」
空中でナイアの重量ある大剣が、とっさに首をひねったシキの額をかすめる。
怒涛の三連撃を身体が動く限界の動きで避け、シキは逆手に構えたダガーを持つ右手が、妙に汗ばんでいることを自覚した。
「(……人型のMobなら、散々殺してきただろ? 何で、何で攻撃できない!? 何で躊躇しなけりゃいけない!?)」
心中で自分を叱責し、ナイアの振るう大剣を身を引いて避ける。
ドゴオッ。
避けるシキの正面、ナイアの脇から棺桶が吸い込まれるかのようにシキの腹を打ち、壁にまで吹き飛ばされた。
「ぐ、はっ、あ……!」
腹に重い衝撃を受け、更に壁に背中をしたたかに打ちつけた影響により、身体から一瞬ながら力が抜ける。
その一瞬を狙ってか狙わずか、ナイアは瞬間移動のような速度でシキの目の前まで移動し、そして、シキの首を掴んで持ち上げる。
「ふふ、貴方、随分と手加減しているようですね。私を舐めているのですか?」
シキの首を掴んだ手に力を込めながらナイアは笑顔で質問した。
その笑顔は純粋な喜びや嬉しいといったものだけでなく、怒りや憂い、憎しみなどが混在した、実に混沌とした笑みだった。
「な、舐めてなんて、ねぇ」
「そうですか? では手加減なんてしてない。これが全力と? ――――巫山戯るのも大概にしろ」
口調ががらりと変わり、その顔には怒りがありありと刻まれていた。
「何故起源を利用しない? 起源さえ利用し、強くあり続けるモノが人間だろう。私達には決して辿りつけない境地に至るものこそ人間ではないのか!? 傲慢で、何もかもを利用し、そして強くあろうとするものこそが人間だろう!?」
ナイアは、そう憎々しげに言い放つ。
もはやそこには先の笑顔など微塵もなく、残酷な怒りと憎悪を惜しげもなく発する、あらゆる負の感情をごちゃまぜにした、何とも言い難い表情をしていた。
シキは強く首を絞められていて、反論を発することさえもできない。
「苦しいですか? ……でも、私達は貴方達が普通に生きているよりも遥かに重い罪を、苦しみを背負っているのよ。その苦しみを、()()()()()に理解できるものか!!」
もはや彼女の表情にも心にも、慈愛や優しさは存在しない。いや、彼女の心には元々そんなもの存在しなかったのかもしれない。あるのは、ただ目の前の人間(シキ)に対しての憎悪と怒りのみ。
「…………!」
シキは無理矢理笑って、声にならぬ声でナイアへと言った。
そんなの、俺にわかる
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