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一人では行かせない
第五章

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「だから麻美もよね」
「一歩踏み出すことが難しいわよね」
「無理かもね、あの娘経験がないから」
 明るい彼女でもそれがなければというのだ。
「人は経験がないことについては臆病になるから」
「だから麻美もなのね」
「あの店長さんへの告白は」
「告白して受け入れてもらえたらいいけれど」
 だが、だというのだ。
「恋愛ってハッピーエンドばかりじゃないわよね」
「そうそう、断られるってことがあるからね」
「それで失恋してね」
「ショック受けてそれでダメージ受けてね」
「そうなるからね」
「そう、麻美もそのことを怖がってるわ」
 経験がないだけに余計にだというのだ。
「だからね」
「中々告白出来ないのね」
「あの娘は」
「さて、どうなるかはわからないけれど」
 それでもだというのだった、理恵は己のコーヒーカップを前に置いてそのうえで腕を組んで言ったのである。
「あの娘も前に進まないとね」
「どうしようもないわよね」
「やっぱり」
「折角お酒以外のことに興味を持てたのに」
 理恵もそれならと言ったのだ。
「そこで前に踏み出さないと」
「何もはじまらないから」
「あの娘にとってもよくないわね」
「お節介になるかも知れないけれどね」
 この危惧はあった、だがだった。
「それでも前に踏み出してもらわないと」
「いけないわね、じゃあ私達としてはどうするか」
「それよね」
「ええ、踏み出せないのなら」
 理恵の目が光った、そしてだった。
 その日もそのイタリアンレストラン、バイキングの店に向かおうとしていた。
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