GGO編
episode1 風を受けて2
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それってもういつの話だよ。
『『D』、無事であれば報告を』
「ああ、わりいわりい。相手は七人、洞窟の横穴出てから渓谷の右五十メートルに三人、左に二人。んで、二百メートル先に二人、だな」
耳元に嵌ったイヤホンからのミオンの指示に、慌ててマイクを口に当てて呟く。
一瞬の攻防戦の間にこらした目は、敵の布陣をしっかりと見抜いていた。……のだが、それでは我らが作戦参謀殿は俺のその報告程度ではご不満だったらしい。無表情な口調に、なにやら迫力を感じさせるものを加えて続ける。
『武装と特徴、確認されたメンバーは?』
「……あの一瞬で、見えるもんかね?」
『私の知る『D』さんは、それが出来る方です。計算では見えた確率は八十パーセントです』
返される声は、確信を持った声。
……まあ、確認出来てると言えば出来てるんだが、そこまで確信持てるかよ、ったく。
(末恐ろしいぜ……、あの司令官殿は)
一つ溜め息をつく。
まあ、今は考えても仕方ないか。俺は再び詳しい説明をスピーカーに呟いた。
◆
「雑技団」のスピーカーは、常時全員に通じている訳ではない。
その状態に設定してあるのは親機であるミオンのもののみで、他のメンバーは適切に設定した際に指定された機同士での会話しか出来ないのだ。ちなみにその「適切な設定」というのは、ミオンが手元で天才的に操作するからこそ実現している。
だからシノンには、報告を聞いて彼女がゆっくりと目を閉じたことしか分からなかった。
(……ミオン、か……)
知らないものが見れば、単なる運び屋にしか見えない、銃を持たないプレイヤー。まことしやかにささやかれる「天才司令塔」の噂も、こんなそれぞれが自由に動き回れるVRMMOでは言うほどの指示などできないだろうと、シノンも思っていた。
しかし、それは間違いだった。
「……分かりました。敵は向かって右に三人、左に二人、正面奥に二人。主力としては右に『魔鎖夜』、奥に『獅子王リッチー』です。……作戦を言います。まずはカメさん、正面出口に目晦ましの為のプラランを一発お願いします。その後は、壁として私とシノンさんを庇ってください」
「ガハハ! 任せておけ!」
数秒の黙考から紡ぎだされるのは、絶対的不利を微塵も感じさせない強気な口調。
「ツカサは、左の二人を。目晦ましを最大限に生かして、光学防御フィールドの減衰効果が失われる至近距離までなんとか接近、撃破してください。理想はHP五割残しで」
「りょ〜かい。……魔鎖夜へのリベンジは、また今度ね」
作戦も強気で、一対二を悠々と提案するが、ツカサもそれを軽く受け入れる。
(……私は、この指示に、こんなに簡単に頷ける
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