暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
GGO編
episode1 風を受けて
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をシノンは、顔は向けずに……しかし全力で耳を立てて脳に刻み込む。

 成程、彼は……いや、《索敵》スキルを究めたら、そこまで先が見えるのか。確かにヘカートの射程は桁外れに長いが、それでも一キロ、それも相手の警戒の隙を突いてとなると今のシノンの腕ではかなり命中率は落ちる。それを一撃で決めることが出来なければ、勝ち目はないということか。

 「……更に言えば、AGI一極型相手にはやっぱ狙撃は相当きついんじゃないか? 分かってる奴は分かってると思うが、AGI一極型は「走っている時が一番安全」だ。弾速が音速を超えるヘカー……狙撃銃でも、キロ単位で離れればコンマ数秒は着弾が遅れるから、そんな奴を狙撃するのは至難の業。そしてもし俺がBoBにソロで出るなら、一秒たりとも停止はしねーだろうな」
 「ふむふむ、と言うことは、狙うならオレと合流した時、というわけだね?」
 「ま、万一止まっても相当に《索敵》に集中するぞ。一キロ半くらいまでは見逃す気はねーし。……今だって、お前と喋ってたって、グリドースよりは索敵出来る。…そこを超える狙撃が出来て、初めて一人前……ってか、ソロの狙撃手って感じだな」
 「キビシイね? 全く、キミは何処からコンバートしてきたんだい、ホントに」

 なおも二人の話す情報を、一言も漏らすまいとシノンは耳を澄ます。

 とんでもない話を平然とする彼らだが、彼らと同じフィールドに立つにはそれだけの技量が必要だということを、改めて思い知る。このGGOで、スナイパーというFPSの花形兵種が不人気なのは、それだけの技量を得ることの困難さ故なのだ。

 しかし。

 (なら、私が最初に()()なってやる……)

 それはシノンにとっては諦める理由では無く、奮い立つ動機だった。決意を胸に、肩に背負った狙撃銃の銃身をそっと撫でる。想いを馳せるのは、グロッケンに預けてある激レアの狙撃銃……自分の最初で最後の愛銃となるであろう、あの鉄でできた冥界の女神。

 目つきを鋭くするシノン。
 その目線の先で笑うツカサに、シノンは無言で頭を下げた。





 帰りは、滞りなく進めた。

 このダンジョンはどうやらボスを倒せば一方通行の安全なルートが出現して、出口付近までMobと遭遇することなく帰れるようになっていたのだ。ツカサやカメ爺さんは完全にだらけムードで、グリドースの《索敵》も一応、という程度。そんな状態だったから、帰り道は数分で出口の光が見える所まで来られた。その瞬間、皆の意識が、ほんの少し……しかし確かに、緩んだ。

 (……ま、無理も無いかね……)

 だが、俺は知っている。

 どんな時だろうと、油断は容易に死に繋がることを。
 本当の意味では今は失われたあの世界で、嫌というほど思い
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