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剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第八話 月下の口づけ
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 山脈に沈んでいく夕日が、緩やかに広がる草原を赤く染め上げている。
 万色に彩られた世界が、赤の世界に移り変わり始めていく。
 そんな中、夕焼けの光を浴びながら丘の上に立つルイズたちは、夕日に色に染め上げれられた草原を見下ろしていた。

 息を飲む美しさ。

 絶景。

 昼と夜の境。

 自然が生み出す一瞬の美。

 しかし、そんな美景を目の前にして、ルイズとキュルケは、感動に打ち震えることなく、また、息を飲むようなこともせず、ただ、ショボつく目を擦りながら顔をふらつかせていた。

時折頭だけでなく、身体全体も揺れ、頭から倒れそうになっているが、その度にぎりぎりの所で気が付き、慌てて頭を振るということを何度も繰り返していた。
 しかし、それも仕方がないことであった。高貴な貴族であるルイズとキュルケにとって、歩きでの旅の経験など豊富な訳もなく。ロサイスで一晩休んだとはいえ、目が覚めてから一日

中歩き続けたため、既にルイズたちの疲労は限界を越しており。ルイズたちは、まるで鉛を飲み込んだかのように全身を重く感じていた。
 そんな今にも倒れ伏し、いびきを上げそうな二人の姿に、シエスタは何度も後ろを振り返っては心配気な視線を向けている。

「あの、ミス・ロングビル。二人共もう限界のようですが」
「…………」

 このまま歩き続けるのは流石に無理っ! と判断したシエスタは、横に立つロングビルに声をかけるが、ロングビルはシエスタの声掛けに応えることなく、目を細め何かをじっと見つめている。

「ミス?」
「……ん? ああ、すまないね。ちょっと見とれていたよ……余りにも綺麗な景色だからね」
「え? ……そう……ですね」

 ぼうっとした顔をしていたロングビルだったが、シエスタの訝しげな顔に気付くと、目を細めたまま微かに口の端を曲げると小さく首を振った。シエスタはロングビルの言い分に頷いたが、納得はしてはいなかった。
 なぜなら、丘の上から草原を見下ろすロングビルの顔には、綺麗な景色に見とれていたと絶対に言えない。
 余りにも複雑な感情が浮かんでいたから……。











 空から降り注ぐ月の光を遮る枝葉の下で、少女たちの苦痛に呻く声が闇の中響いてた。
 
「ま……ま、だ、だいじょうぶよ」
「まだ、いけ、るわ、よ」
「……こりゃもうダメだね」

 木々が生い茂る森の中。地面の上でうめき声を上げ、それでも前へと進もうとするルイズとキュルケを見下ろしながら、ロングビルが苦笑いを浮かべている。

「ウエストウッド村でしたっけ? もう日が落ちましたし。明日にしませんか」

 シエスタが提案すると、ロングビルは小さくため息を着いた。
 
「そうだね。これじゃ仕方ない
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