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剣の丘に花は咲く 
第一章 土くれのフーケ
第九話 デルフリンガーとの出会い
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してくれるんなら、上等だ!」
「やってやらあ!」

 主人が歩き出した。しかし、士郎はそれを遮る。

「いや、少しまてくれ。これは」

 主人に食ってかかっていた剣は唐突に黙り込むと、柄がカチャリと音を立てて微かに動いた。まるっで、士郎を仰ぎ見るような形となった剣は、歳ほどとは一変し黙り込んだまま何も喋らない。
 だが、押し黙った時と同様に、また突然話しだす。

「――おでれーた。おめ“使い手”じゃねーか」
「“使い手”?」
「んん? 知らねえのか? まあいい、てめ、俺を買いやが―――」
「ああ、分かった」

 言い切る前に士郎は申し出を了承する。

「ルイズ。これを買うぞ」

 猫騙しをくらった猫のようにピクリとも動かなくなった剣を見せると、ルイズはいやそうな声をあげた。

「え〜そんなのにするの? もっと綺麗で喋らないのにしなさいよ」
「いや、これがいい」

 士郎のかたくなな態度を見てルイズはため息をつきながらも店主に尋ねた。

「あれ、おいくら?」
「あれなら、百で結構でさ」
「へぇっ、安いじゃない」
「まあ、こっちにしてみりゃ、厄介払いみたいなもんですからね」
 
 店主は手をひらひらと振りながら応えた。
 許可を取った士郎は、事前に預かっていたルイズの財布を上着のポケットから取り出すと、中身から剣の代金分を取り出し店主に渡す。

「毎度」

 代金を受け取った店主は、士郎に渡した剣の鞘を指差す。
  
「どうしても煩いと思ったら、鞘に入れときゃおとなしくなりまさあ」
 
 店主の言葉に頷き、こうしてデルフリンガーという名の剣は士郎の物となった。

 



 武器屋から出てきた士郎とルイズを見つめる二つの影があった。キュルケとタバサの二人である。キュルケは路地の影から二人の様子を見つめながら、唇をギリギリと噛み締めていた。

「ルイズったら剣なんか買って気を引こうとしちゃって。いつの間にあんな手を使うようになったのよ」
 
 地団駄を踏むキュルケ。相撲取りの土俵入りの如く地を踏めるキュルケの横で、タバサの小さな身体が上下に揺れている。視界が上下する中、学院を出た時に持っていなかった剣を士郎が腰に差しているのを確認したタバサは、懐から本を取り出すと読み始める。
 そんな二人の真上には、ウィンドドラゴンのシルフィードが高空でぐるぐると回っている。
 二人が見えなくなるまで待った後、キュルケは本を読み続けるタバサの襟首を掴むと引きずりながら武器屋の戸をくぐった。カウンターに肘をついて何処か惚けたような顔をしていた店主が、来店してきたキュルケたちの姿を見て目を丸くした。

「か〜、こりゃ今日は剣の雨でも降るってか? まったく今日はどうかしてるな。ま
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