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我が剣は愛する者の為に
預かった子供
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「ただいま。」

「唯!!
 今までどこに行っていた!!」

帰ってきて早々、夫である関栄に怒鳴られる。
最近はこの村でも賊がやってくる事が多い。
今朝は関栄にどこに行くかを告げないで外に出かけたのだ。
今の今まで心配していたので思わず怒鳴ってしまう。

「どこにって森に行ってたのよ。」

「それを私に言ったか?」

「あっ。」

言い忘れた事に気がついて関流は声をあげる。

「お前は強い。
 だけど、それでも万が一のことはある。
 頼むから私に一声だけかけて言ってくれ。」

心の底から心配していたのか、関流の肩に手を置いて言う。
心配させていた事に気がついて、関流は謝る。

「ごめん。
 次からはちゃんと言うわ。」

「分かってくれたのならいいよ。」

関栄に許しを貰って少しだけホッ、とする関流。
ちなみに関栄が言っていた唯というのは関流の真名だ。
真名とは本人が心を許した証として呼ぶことを許した名前であり、本人の許可無く真名で呼びかけることは、問答無用で斬られても文句は言えないほどの失礼に当たる。
唯の腕の中の赤ん坊が大きな声で泣き出すと、関栄は唯の腕の中にいる赤ん坊に気がついた。

「唯、その子供は?」

「この子?
 この子はね・・・・」

先程の森での出来事を関栄に説明する。
それを聞いた関栄はそうか、と呟いた。

「そんな事があったのか。」

「この子を育ててほしい、って遺言を聞いてね。
 でも、この子一向に泣き止まないのよ。」

「どれ、貸してごらん。」

関栄に赤ん坊を渡す。
関栄は慣れた手つきで赤ん坊をあやす。
それが効いたのか、泣き叫ぶ声は次第に小さくなっていき、眠ってしまう。

「ほんと、こういう事は栄進、得意よね。」

「お前が不器用すぎるんだよ。」

栄進とは関栄の真名である。
栄進は唯と違い、武人ではなく文官だ。
赤ん坊は栄進に任せれる事を確認した唯は籠を置いて、薙刀を片手に家を出ようとする。

「おい、どこに行くんだ?」

赤ん坊を起こさないようにあやしながら、家を出て行こうとする唯に話しかける。

「この子の親を弔ってあげないと。
 遺体はまだ、森の中にあるの。」

少し悲しげな表情を浮かべて唯は言う。
栄進は唯が悔やんでいる事に気がつき、こう言った。

「分かった。
 だが、他の人に協力してもらいなさい。
 一人じゃあ危ないからな。
 それと、お前が気にする事じゃない。
 結果的に見て、唯が居なかったらこの子は死んでいた。」

「うん、ありがとう。」

それだけを言って唯は家を出て行く。





何人かの村人の助けを借りて、赤ん坊の親の墓
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