暁 〜小説投稿サイト〜
豹頭王異伝
転換
精神接触
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 リリア湖畔の離宮、アルド・ナリスの寝室は昏い。
 失明寸前の視覚に掛かる負担を減らす為、窓は厚い暗幕(カーテン)で締め切られている。
 脳裏を貫く銀色の閃光が聖王家の反逆者を包む浅い眠り、混沌の如き無数の夢鏡を断ち切った。

( 第十三号転送機より、セカンド・マスター<アルド・ナリス>へ。
 ファイナル・マスター<ランドックのグイン>より、念話コンタクトが要請されています。
 念話コンタクトに、同意しますか?  )

(同意する)
 即答。
 感情の入り込む余地を持たぬ銀色の念波は、古代機械以外の物ではありえない。

 次の瞬間。
 豹頭の追放者と聖王家の思索家は、互いの精神特性と思考様式(サイコ・パターン)を認識した。


 外見の大幅に異なる両者は面識が無く、心話を交わす機会も無かった筈だが。
 奇妙な事に、双方が既視感を覚えた。
 不思議な感覚、異様な感動が共鳴する。

 言葉に置き換えると『数多の体験を共有する存在、魂の絆を有する旧友だ…』と云う所か。
 互いの精神的視野に生じた想念を同時に感知、共有する精妙にして鮮烈な感覚。
 思念波増幅装置の奇蹟、精神接触《コンタクト》に拠り新たな可能性の扉が開かれた。

 ナリスの苦痛を感じた豹頭の追放者は、反射的に膨大な活力を注入。
 パロ聖王家の正統後継者、アルシス王家の遺児に星々のエネルギーが流れ込む。
 治癒の光を遙かに凌駕する摩訶不思議な波動が全身を駆け巡り、細胞を賦活化。
 拷問を受けた後も絶え間無く蠢き、ナリスを苛み続ける後遺症の苦痛が消えた。


(古代機械、答えろ。
 ナリス殿の身体を、可及的速やかに治療する事は出来るか?)
( 片脚の再生、生命維持と運動機能の修復には松果腺刺激再生手術が有効と判断されます )
(所要時間は?)
( 手術自体は数分で完了しますが、神経細胞の修復には当惑星時間で約3日程が必要です )

(ケイロニアのグインより、神聖パロ政府首席アルド・ナリス殿に申し上げる。
 パロ聖王家の秘蔵品、古代機械を無断で借用させていただいた。
 諸般の事情に撚り認可を得られず、事後承諾の形となっってしまった事は謝る。
 必ずや何等かの形で償わせていただく故、誠に申し訳ないが御勘弁を願いたい。

 俺は聖王レムスに憑依した竜王と対面し、クリスタルが闇の迷宮と化した事を確認した。
 ヤーンの導きにより覚醒を果たした貴方の妻リンダ、カラヴィア公子も同行している。
 部下が置き去りになっている故、古代機械を使い俺は彼等の傍に転送させて貰う。
 他の部隊も黒魔道の奇襲には備えが無い、詳しい話は後にさせて貰えれば大変助かる)


(了解しました)
 詩人の魂が暴走せぬよう、ナリスは一言に返事を抑え
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ