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予言なんてクソクラエ
第十三章 仮面
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    (一)
 龍二が現れたのは40分後である。まるでプロのカメラマンのようで、どんな格好をしてもぴたっと決まる。石井は何も考えず双眼鏡一本を持ち出したが、龍二のカバンには3本の望遠レンズが収められていた。龍二が言う。
「尾行はまいたか?」
「大丈夫、最後にはこっちが相手を見張っていました。いかにも信者っていう若者が、あたふたきょろきょろしていて笑っちゃいました。」
「よし。それじゃあ出かけるか。実はな、真治、建設中のビルが悟道会ビルの斜め前にある。そこの現場監督と話がついているんだ。直ぐに行こう。」
石井は龍二をせかせて建設中のビルに向かった。その建設中のビルの現場監督は龍二から封筒を受け取ると、用意してあった場所に案内した。悟道会の18階建ビルの三階に位置し、出入りする車と人が手に取るように見える。
 打ちっぱなしのコンクリに突き出た鉄筋。何とも殺伐とした空間だが、今は、ここしか五十嵐と山口の捜索の糸口を探る場所はないのだ。龍二が悟道会のビルを見上げて言った。
「何だあれは。とってつけたようなビニールシートの壁があのビルの屋上にある。ちょっと屋上に行って見てこよう。」
カメラをセットする石井にそう言うと、龍二はその場を離れた。セットし終わって、しばらくしてぐらぐらっと横揺れが2分ほど続いたが、何事もなくおさまった。冷や汗を拭い、ほっと胸を撫で下ろしていると龍二が戻ってきた。
「随分長い地震だったな。どうやら本当に来るかもしれん。」
「大災害ですか?」
「ああ、昨日今日の千葉沖を震源とした地震が、こうも頻発するのは観測史上初めてらしい。何かの前兆としか思えん。ところで人の出入りはどうだ。」
石井は二日間新聞もテレビも見ていない。その時は、何気なく千葉沖が震源というのが気になったが、すぐにそれも忘れ答えた。
「ひっきりなしです。でも、そうとう警戒が厳重です。敷地に隣接した駐車場はさほどでもないですけど、地下駐車場に入る車は警備室から警備員が出てきてチェックしています。さっき一台追い返されていました。」
「そうか、恐らく地下駐車場に何かある。よく注意して見ていろよ。俺はちょっと出かけてくる。あのビルの屋上に何かが人の目を避けるように置かれている。悟道会ビルのより高いビルから確かめてくる。」
と言うと、カメラマンバッグを開けて巨大な望遠レンズを取り出した。
「じゃあ、よく見張れよ。」

     (二)
 五十嵐は暗い倉庫に押し込められた。後ろ手に縛られたまま、呆然とあたりを見回した。仏像や段ボール、機械らしきもの、あらゆる雑多なものが隅に積まれていた。ここに押し込められるまえ、五十嵐は教祖の前に連れて行かれた。
 教祖を見るのはこれで二度目だ。最初は杉田満の葬儀の時。あの時の教祖は、脂ぎった顔をてかてかに光らせ、流れる
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