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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
剣を手に入れた女のお話・2
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これからどうしよう、と剣をずるずる引きずりながら考えるけど良い案が浮かびませぬ。
そもそも次元世紀末がどんな世界かも良く分からないのにどうしろと?

「お腹すいた・・・足疲れた・・・」

分からないし考えが纏まらないのでとにかく歩く。周囲は未だにお空に現れて消えた建造物のせいで騒ぎが収まってないから私の事を気にする人なんていないみたいだ。
これから私は何をすればいいんだろうか?交番に行って「何も覚えてません」とか言って記憶喪失の振りをして、一人でどっかの病院で過ごすんだろうか。


そういえば。困ったことがあると私は良く母さんに泣きついていたな〜と微笑ましかった頃の思い出を掘り返し、そこでふと思う。

「そっか・・・ここは違う世界だから、もう母さんにも父さんにも会えないんだ・・・」

自分が死んだと聞いてからずっと麻痺していた思考がようやく動き出す。
もう私は家に帰ることは無くて、会社の文句を同僚や友達に聞いてもらうこともなくて、飼い猫の世話を焼くこともなくて・・・行きつけの散髪屋のおばちゃんとも魚屋のオジさんとも大家さんとも二度と会えることはないんだ。

「誰も私を知らないし、私は誰にも会えない・・・」

それって、何かやだなぁ。
確かに私は社会人として自立したけど、それが皆との今生の別れだった訳じゃない。
でも今は違う。住む世界が違うのではもう会えることなどあるはずもない。
あった筈のもの全てにもう(まみ)えることがないのか。誰に甘える事もなくずっとすごさなければならないのか。

「いやだなぁ・・・」

私が此処で斃れたら誰かが泣いてくれるだろうか。もし泣いてくれる人がいないなら、それはとても淋しいことだ。
見果てぬ異界の地で果てる事も嫌だが、私が死ぬときに誰も周りにいないのは余りにも淋し過ぎる。

「独りって、こんなに胸が痛くなるものだったんだ・・・」

脚の動きが自然と遅くなっていき、気が付けば誰もいなくなっている町のはずれで足が止まる。
孤独、不安、恐怖、叶わぬ望郷の念に言い得ぬ哀しさ。溢れ出る感情を必死に抑える。

「・・・ぐすっ」

・・・あ、あれ?おっかしいなぁ。私、これくらいで泣く子じゃなかったはずなんだけど・・・どうしてぐずってるのかな?なんか目から涙が出るのも止まらないし・・・いかん、泣くな私!ここで泣いたら泣き止んだ後に凄い恥ずかしい思いをすることになるぞ!シリアスをシリアルに変えるんだ!

「そ、そう!この魔法のステッキ『エスカリボルビング四宝剣』を振ればあら不思議!貴方の望む家族が・・・」

と言いながら剣をブンと一振りしてみると――




「・・・はれ?」




――目の前に凄く見覚えのある一軒家が出現した。





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