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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第66話 おまえの名前は?
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 巨大な発動機が発する振動。まるでうなりを上げるようなエンジン音が、今まさに飛び立とうとする水上機……飛空艇から聞こえて来た。
 そして、沖から吹き付けて来る風を正面から受け、ゆっくりとその巨大な身体を宙空へと浮かび上がらせて行く。

 十月(ケンの月) 、第一週(フレイアの週)、ダエグの曜日。

 結局、あのガリア両用艦隊の主力艦隊が壊滅した日から三週間。俺と、湖の乙女(ヴィヴィアン)は未だ、この軍港ブレストに存在しています。
 もっとも、今では、軍港と言うよりも水上機の基地と言う雰囲気なのですが。

「あれが操縦出来るようになった今でも、何故、あのような鉄の塊が、風石を使う事なく蒼穹(そら)が飛べるのか、私には不思議で成りません」

 俺の隣で、同じように練習飛行に飛び立つ巨大な飛空艇……。第二次大戦中の日本製の二式大艇と言う機体を見送りながら、彼に相応しいやや生真面目とも取れる言葉を投げ掛けて来るガリアの若い騎士。
 何となくですが、彼から感じる雰囲気と言うのは、矢張り、彼の婚約者の少女から感じる少し生真面過ぎる雰囲気と被る部分が大きいように思いますね。

「一応、あの翼に付いて居る微妙な角度によって、揚力と言う物を発生させて居るのですが……。どうしても聞きたいのなら、大ざっぱで良いのなら説明を行いますが、どうします、聞きたいですか?」

 俺は、新しくガリア両用艦隊。いや、今はどう見てもガリア航空隊飛空艇師団と言った方が良い部隊の指令となったジル・ド・モンモランシ=ラヴァル。有名な方の名前で言うと、ジル・ド・レイに対してそう答えた。
 それに、彼の現在の所領もこのブルターニュ地方のレイと言う街ですから、ここの指令となる資格は有しているとは思いますが。

 それでも、家柄から言えば、彼はガリアの陸軍系に勢力を持つ一族に繋がる人間。そして今までも、それに相応しい西百合騎士団副長と言う役職に就いて居ましたから、其処から考えると、この抜擢人事は、かなり異常な状況と言うべきだとは思いますけどね。

 もっとも、ガリア両用艦隊の指令本部は、今まで地中海方面艦隊の司令部が置かれて居たトゥーロンに移され、大西洋方面の艦隊司令部はアルビオンを睨んでいる英仏海峡艦隊司令部の置かれて居るシェルブールに移されましたから、彼……。ジルに掛かる負担は、そう大きな物でもないのですが。
 まして、彼は、俺の正体……オルレアン大公子女シャルロット姫の使い魔で有る事や、その上、異世界の魔法使い(式神使い)で有る事を知って居る人間ですから、この異常な状態。水上機などと言う、ハルケギニアの常識から言うと摩訶不思議、訳の判らない存在を受け入れる土壌は有るので……。適任と言えば、適任なのですか。



 あのダゴン(水の邪神の眷属)
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