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ブルース
第二章
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「子供さんや奥さんだよ」
「そうした人を悲しませることはこの世で一番悪いことですね」
「人殺しと同じだけな、だからな」
「はい、絶対にですね」
「事故は起こすな、悲しませるな」
 そしてこうも言う若松だった。
「心配させるな、いいな」
「わかりました」
 暁羅は若松のその言葉を心に刻み込んだ、そのうえで妻となった愛美、旧姓小早川愛美と共に暮らす様になった。
 愛美は明るく気立てのいい女性だった、
 細いが量の多い黒髪を後ろであげて束ねている。目は一重で猫の様にやや上がり細い眉が綺麗なカーブを描いている。
 耳の形は整い髪の毛から出ている。鼻の高さは普通で均整の取れた大きさだ。薄い肌色の唇で手は短く足は長い。胸の形もいい。
 二人で共に暮らしていて愛美はいつも暁羅に笑顔でこう言っていた。
「パイロットのお仕事って大変よね」
「ああ、給料はいいけれどな」
 パイロット手当がある為だ、パイロットは給料もいいのだ。
「それでもな」
「一瞬の油断が、よね」
「ああ、本当にな」
 暁羅も妻にこう答える。
「事故とかの危険はな」
「いつもよね。だからね」
「ああ、油断するなっていうんだな」
「だからそれも買ったの」
 愛美は笑顔で夫の胸元を指差した、そこにはお守りがあった。
「それね」
「これな。これがあるとな」
「違うと思うから」
 気休めという者もいるだろうが神様が守ってくれるからというのだ。
「だからね」
「そうだよな、神様もいてくれるし」
「だから気をつけてお仕事してね」
「ブルースは激しい操縦が常だしな」
 ショーだからだ、それこそアクロバットな操縦ばかりだ。 
 それ故に危険が多い、だがそれでもなのだ。
「事故は起こさない様にしてな」
「頑張ってね」
「ああ、それじゃあな」
 出勤の際よくこう笑顔でやり取りをしてだった。
 暁羅はブルースで訓練にショーに専念していた、結婚してからも暫くブルースにいた、妻も理解があると思っていた。
 だがふとだ、その彼に若松が訓練の後でこう言って来た。
「奥さん何か言わないか?」
「何かっていいますと?」
 練習機から降りて控え室に戻る時のやり取りだった。
「それって」
「だからな、奥さん心配していないか?」
 こう彼に言って来たのだ。
「そんなこと言われてないか?」
「心配っていいますか」
 暁羅は愛美とのやり取りを思い出しながら答えた。
「励ましは受けてます」
「胸のお守りか」
「はい、これで」
「そうか、それか」
「油断するな、頑張ってくれって」
 微笑んで若松に答える、控え室までの道をパイロットスーツで並んで歩きながら。
「そう言われてます」
「だといいけれどな、ただな」
「ただ、ですか」
「いつも言って
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