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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第十六話「過激なこの世界」
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う団長も可愛いですね」


「なー。まさに恋してる乙女って感じだな」


 そんな団員の言葉に顔を真っ赤に染めたエリスは声を荒げた。


「か、からかうな! た、確かに先日の件で少しは見直したが、それだけだ! 私が憧れるのは、かの謎の精霊使いのような、凛々しく高潔で強い女性なんだ。断じてこんな男ではない!」


 ――ここにも謎の精霊使いのファンが……。


 認めたくはないが、フローレン・アズベルトは精霊使いの中では、売れっ子アイドル以上の熱狂的なファンや、教祖にも匹敵するほど崇拝されているのが現状だ。


 原作のレン・アッシュベルと同等かそれ以上の人気っぷりを誇る自分の偶像に、顔が引き攣りそうになる。


 そんな俺に何を思ったのか、キッとエリスが睨んできた。


「なんだ、私がフローレン・アズベルトに憧れているのがそんなにおかしいのかっ!」


「誰もそんなこと言っていないだろう……」


 疲れた返事をする俺は悪くないと思う。


 いつまでも話が進まないことに業を煮やしたのか、トントンとリズミカルにテーブルを指で叩く音が加速した。


「いいから、早く本題に入りなさいよ」


「むっ、そ、そうだったな……コホン」


 仕切り直しをすると、キッと強い眼差しで俺を見据えた。


 こちらも背筋を正し、傾聴の姿勢を取る。


「リシャルト・ファルファー……」


「いけ、いっちゃえ団長!」


 ラッカの発言を黙殺し、エリスが言葉を続けた。


 緊張で震える手をキュッと握り力強く言葉を口にする。





「き、君がほしい……!」





 ――いつだって世界は過激だ。


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