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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
16 「双牙携えし竜は白き幻に見ゆ」
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 曇天の下不意に放たれた閃光に気絶しひっくり返った猪は6頭。他はKOには至らなかったものの目に星を散らすことは出来たらしく、驚いてその足を止めた。岩壁と崖に挟まれた狭い道が幸を奏したようだ。後ろでは急停止に追いつけなかったファンゴ達が次々と追突され、仲間の尻を自分の牙で突くという思わぬ二次災害が置きていた。弾き出された数頭は崖の下に転落したかもしれない。

ブヒィ――!!

 太刀を振り抜き一閃。3頭のファンゴの頭を文字通り上下に寸断して噴き出す血飛沫は側転して避ける。避けながら立ち止まったうちの1頭の鼻面を勢いに任せて蹴りつけ、のけぞったファンゴの前足を斬り落とした。
 少し離れた所ではルイーズが猪共の足の間を跳ねまわり、攪乱させては同士討ちを誘発させる。時に自慢の手裏剣で目を潰すのも忘れない。
 飽くまでルイーズの役割はファンゴの足止め。1頭1頭倒していては時間がかかりすぎて猪の侵入を許してしまうから、留めを差すのはナギ、あるいは後方のリーゼやエリザの役目だ。
 愛猫が順調に働いているのを横目に確認すると、ナギは目の前の敵に集中した。
 ひっくり返った残りの3頭も一撃で血の池に沈めるとすぐ身を翻し背後死体を乗り越えてきた1頭を薙ぐ。
 閃光玉が放たれてまだ10秒にも満たない。唐突に仲間を8頭失ったファンゴ達は、闇雲に突進するではなく攻撃対象をナギに設定したらしい。一斉にこちらを向き前脚で地を掻く様子は中々に盛観だ。

ブヒィ――!!

 こちらを向くのが一斉なら、突進のタイミングも同時にやって欲しいものだが、そうはうまくいかない。微妙な時間差をつけて、だがどれもただ1点を目指して弾丸のように突っ込んでくる。

「ナギさんッ!!」

 最初にナギに到達した1頭の鼻に手が触れた――と思った刹那、ナギの体は宙に舞い、ファンゴの頭は地に沈む。空中で回転しながら太い首に華を咲かせ、倒れた猪の後ろに鮨詰めになっていたもう1頭の背に着地。

「投げます!」

 猪の悲鳴と血の噴く音の隙間に、辛うじて聞こえた鍛冶師見習いの声に目を閉じる。一際高い耳障りな声と同時に、瞼の向こう側が白に埋め尽くされた。
 自分が乗るファンゴも平行感覚を無くしたようで、安定しないその背の肉を削ぐ。

 ナギの太刀がうなりはじめた。

 旋風のように踊る太刀はその刃が撫ぜた後に赤い残像を刻み、舞う飛沫はナギの着物を赤く染める。
 その殺戮は芸術的ですらあった。蝶の如く不規則にゆらゆらと動いては、舞い降りた地に赤い華を散らす。瞬く間にファンゴの死体は量産された。
 しかし、あまりに数が多すぎた。道は狭いといっても竜車2台がすれ違える程度の幅はあり、中央で竜巻のような死闘を繰り広げているナギも、やがて道の端から零れていく数頭のファンゴを逃すの
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