暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
第二話 友達
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タはその時のことを思いだし、くふふと含み笑いを浮かべた。

「『あたしの中にシロウがいて、シロウの中にあたしがいるからよっ!!』て言ったんです」
「は? どう言う意味よそれ」

 顔を顰めてみせるルイズを見て、シエスタの顔に浮かぶ笑みがさらに濃くなる。
 顎に指を当て、う〜と唸りながら考え込むような仕草を見せると、シエスタは胸を抱くように身体を腕を回す。

「まあ、その言葉通りだと思いますよ。ミス・ヴァリエールも何となく分かるんじゃないんですか?」
「うっ……まぁ、確かに……分からなくはないわ、ね」

 『あたしの中にシロウがいて、シロウの中にあたしがいる』意味不明な言葉だけど、確かにそうとしか言えない感覚だった。
 胸の中にシロウの気配があって、そして、その気配の中に、自分が入っているような……。
 言葉に出来ないそんな不思議な感覚。
  
「……それでもう一度聞きますが、シロウさんは死んだと思いますか?」
「ぅ……それは……」

 からかう調子で聞いてくるシエスタを、恨みがましい目で見上げるルイズ。
 それをにやにやとした笑みで見下ろすシエスタ。

「…………」
「何処行くんですか?」
「お風呂よ」

 無言でベッドから降りたルイズに、シエスタは声を掛ける。
 ルイズはシエスタに問いに顔を向けることなく、着替えを取り出しながら応える。

「食事の用意をしておきますね」
「…………」

 着替えを手にしたルイズはドアに向かって歩きだす。
 今度はシエスタの言葉に返事を返さない。
 しかし、開いたドアの前で、ルイズはピタリと動きを止める。

「ミス・ヴァリエール?」

 ドアの前で微動だにしないルイズに、シエスタが訝しげな声を上げると、ルイズは小さく震える声でその声に応える。

「……ルイズ」
「え?」
「ルイズでいいわ」
「ミス・ヴァリエール?」
「だからルイズよ。わたしはあんたの……その友達……なんでしょ。なら、ミス・ヴァリエールじゃなくてルイズって呼びなさい」
「……え? あの? それって」

 戸惑うシエスタから逃げるように、ルイズは部屋から出て行く。
 一人部屋に取り残された形になったシエスタは、暫らく呆然としていたが、ルイズが言った言葉がゆっくりと頭に染み込むと、熱を帯びだした頬に手を添え、


「っふ……ふふ……ええ、わかりました」


 小さな微笑みを浮かべた。


「ルイズ」




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