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ジークフリート
第三幕その六

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第三幕その六

「私は片目を捨てたのだ」
「ではその残った目は僕がだ」
「どうするというのだ」
「邪魔をするなら僕が奪ってやる」 
 実際にそうしかねない勢いだった。
「覚悟はできているな」
「御前は何も知らない」
 しかし彼は言うのだった。
「何一つとしてだ」
「今度はそう言うのだ」
「そうだ、知らないから言えるのだ」
 言いながらその片目でジークフリートを見ている。
「私は確かに片目しかない」
「それはわかっているのだな」
「しかし御前がだ」
「僕が?」
「そうだ。御前がだ」
 また言う彼だった。
「御前がその片目なのだ」
「僕がというのか」
「そうなのだ。御前がだ」
「馬鹿を言え」
 ジークフリートは彼のその言葉をすぐに否定した。嘲笑する顔になっている。
「そんなことがあるものか」
「御前は何も知らないのだ」
「知っていてもそんな話信じるものか」
 言いながら一歩前に出るのだった。
「御前の言葉なんかな」
「そう言うのだな」
「そうだ。そしてまた言うぞ」
 言いながらいよいよ剣を持とうとする。
「道を教えてくれ。いいな」
「道をか」
「そうだ。どうなのだ」
 さらに彼に問う。
「教えられるのかどうだ」
「大胆な若芽よ」
 ジークフリートをこう呼んだ。
「私が誰か知ったならそんなことは言わなかっただろう」
「御前をか」
「そうだ。そうした言い方はしなかっただろう」
 また言うのだった。
「御前を信頼している私にはだ」
「僕を信頼している?」
「そうだ。その言葉は悲しいものだ」
 彼はジークフリートを見ながら述べた。
「御前の心を愛している」
「僕の心をか」
「その私を悲しませないことだ」
 こう話す彼だった。
「いいな」
「それで道をだ」
 とにかくそれを聞こうとするジークフリートだった。
「教えてくれないのか。頑固な奴だ」
「頑固だというのか、私が」
「そうだ、眠れる女のいる場所をだ」
 そこだというのである。
「知っているのか、どうだ」
「道はだ」
「可愛い小鳥はいなくなったが」
 小鳥のこともここで話す。
「その女のことは教えてもらった」
「それを教えるつもりはない」
 ここで言うジークフリートだった。
「何一つとしてだ」
「教えるつもりはないというのだな」
「そうだ。御前はそこに行ってはならない」
 ジークフリートの前に立ちはだかるようにしてきた。
「決してな」
「何故止めようとするのだ」
「それはだ」
「それは?」
「岩を護る者を恐れるのだ」
 こう言うのである。

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