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ジークフリート
第二幕その十三
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第二幕その十三

「御前がそれをわしに気前よく渡してくれないと」
「どうするというんだ?」
「わかっているな、御前の命を貰わないといけないんだ」
 本人に対してにこにこと笑って告げた言葉である。
「その時はな」
「そうか、それはいいことだ」
「いいことだと?」
「御前が僕を憎いというのは僕にとっても嬉しいことだ」
 このことを言い返すジークフリートだった。
「しかし僕を殺そうというのか」
「そんなことは言わなかっただろう?」
 最早自分で自分がわからなくなっているミーメだった。
「御前は誤解している」
「誤解か」
「そうだ。一仕事やって疲れているんだ」
 自分の言葉にここでも気付いていない。
「さあ、身体が熱いだろう。これを飲むんだ」
「何だそれは」
「ヴァルハラへ行ける飲み物さ」
 ヴァルハラのことはジークフリートにも教えていた。
「これを飲んでさあ」
「死ねというのか」
「御前が剣を鍛える間にグラグラと煮ておいたんだ」
 つまり毒ということである。
「さあ、これを飲めば」
「どうなるというんだ?」
「宝も指輪も何もかもがわしのものだ」
「そうして僕が手に入れたものを盗むのか」
 ジークフリートの目はいよいよ怒ってきていた。
「御前はそうして」
「何故誤解ばかりするんだ」
 やはり自分の言葉がわかっていない。
「いいか、ジークフリート」
「ああ。何だ?」
 一応話は聞くのだった。
「わしの密かな企みを何とか隠しているのにだ」
「それはよくわかる」
「わかるな。馬鹿な御前がいちいち逆に取るからだ」
 また言ってしまった。
「困るんだ。よく聞け」
「ああ、聞いている」
「わしが何を言うかな」
 こう強調しての言葉である。
「御前の飲み物は今までだってわしが作っていたな」
「作ってくれと頼んだことはない」
「それを飲んで元気付けさせてやった。だからな」
「それじゃあそれはどうやって作ったんだ?」
 ジークフリートの今の言葉は誘導尋問だった。
「その飲み物は」
「だから安心して飲むんだ」
 ミーメはこの問いに気付かなかった。
「そうすればすぐに御前は」
「僕は?」
「意識が夜の霧の中の様に朦朧としてくる」 
 最初はそうなるというのだ。
「そしてだ」
「そして?」
「すっかり意識がなくなってぐったりとしてしまう」
「そして御前はどうなるんだ?」
「宝も指輪も手に入れる」
 諸手を挙げての言葉であった。
「それでな。しかし御前が起きていれば」
「僕が起きていれば?」
「そうはならない。だから御前が寝ているその間にだ」
「どうするというんだ?」
「その剣でだ」
 今度はジークフリートが持っているそのノートゥングを指し示してみせた。
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