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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第63話 龍の巫女
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「あの土地神の語った内容を湖の乙女(ヴィヴィアン)はどう考える?」

 ガリア両用艦隊旗艦内に宛がわれたウナギの寝床に等しい自室。その狭い室内で、差し向かいと成って食事を取っている男女とは思えないような、色気も何もない実用本位の俺の台詞。
 但し、これは仕方がない事。俺の判断力や人間観察力は、俺の能力を超えたトコロに関しては発揮される事は有りません。ならば、俺と違った観点から、相手の事を判断出来る人間の意見を聞くのは非常に重要な事と成りますから。

 尚、俺が感じた雰囲気からすると、あの土地神の言葉は信用出来ると思って居ます。
 確かに土地神とは、その土地や、その土地に住む存在。人間と人間以外のすべてを慈しみ護る存在ですから、場合に因っては敵となる可能性も有ります。ですが、俺や、あの場に居た湖の乙女に関しては、どう考えてもこのブレストと言う街に仇なす存在では有りませんから……。
 むしろ、ブレストと、其処に住む存在すべてを護る人間(存在)の可能性の方が高いですからね。

「あの土地神の言葉は信用出来る」

 俺の問い掛けに対して、簡潔にして明瞭な答えを返す湖の乙女。室内を照らし出す魔法のランプの、そのややオレンジ色に染まった明かりが、彼女の銀のフレームと硝子に反射して、彼女の鋭利と表現すべき瞳に更なる力(説得力)を与えているかのようで有った。

 ただ、その場合だと、

「正式な書類を偽造して倉庫から物資の持ち出し横流しを行って居る、……ぐらいしか考えられなくなるな」

 土地神がどの程度、人間界。特に、物資の出し入れに気を配っているのか、と言う疑問は当然存在しては居ますが、それでも、夜陰に紛れて倉庫に忍び込む、などと言う、見るからに怪しげな事が行われた形跡はないと言う事だと思いますから。

 もっとも、その程度の事ならば、既にガリア両用艦隊内部の監査で調べて居るはずです。そして、その結果、余程巧妙に隠蔽していない限り、兵站部門の人間が捕まって事件が解決していると思うので、俺の元。北花壇騎士団の方にまで仕事が回って来るとは思えないのですが……。
 ただ、そうかと言って、ガリア両用艦隊上層部。少なくとも昼間に面会した艦隊司令からは、別に不審な雰囲気は感じなかったのですが……。

 俺は、昼間に面会した、名前に非常に問題が有るが、能力的には、そう問題点を感じる事の無かったガリア両用艦隊提督の姿を思い浮かべながら、そう考えた。

 いや、この場合不審なのはむしろ俺の方ですからね。一見習い士官の分際で、着任の挨拶に艦隊司令の元に訪れているのですから。
 本来ならば、あの場に誰も居なければ、今回の任務に対するイザベラの指令を口頭で伝える事が出来たのですが……。
 もっとも、あっさりとあの場に通されたのですから、
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