黄巾の章
第11話 「忝(かたじけな)い……」
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―― 劉備 side 洛陽近郊 山間部 ――
砦は門が開け放たれて霞さんが突入すると、すぐにも降参する人が続出しました。
あらかじめ内部で潜伏していたという義勇軍の人たちが、この砦にあった糧食を全部焼いたみたい。
武器や資材も焼かれて、手も足も出ないことを悟った黄巾の人たちは、あるいは逃げ、あるいは投降しています。
「こんなにあっさり砦が落ちるなんて嘘みたいやわ」
霞さんが兵隊さんに指示しながらポツリ、と呟きました。
言うとおりかもしれません。
半分以上を反対側の山の斜面に釘付けにしているとはいえ、それでも砦がこうもたやすく落ちるなんて……
「桃香様!」
「お姉ちゃーん!」
あ!
「愛紗ちゃん、鈴々ちゃん! よかった、無事だったんだね!」
「当然です。我らが黄巾ごときに破れるはずがありません」
「こーきんは大したことなかったのだ。それより狭い場所に閉じ込められていたことのほうが、よっぽど堪えたのだ」
当たり前、と胸を張る愛紗ちゃんとは対称的に、肩をもんでしかめ顔の鈴々ちゃん。
そっか……なんにしても無事でよかった。
「正直、隠れている間に鈴々がもぞもぞ動くので、いつばれるかと冷や冷やしていましたが」
「だって、狭い中で愛紗の胸の中に鈴々の顔が埋まるのだ。息苦しくてしょうがなかったのだ」
「わ、わたしだって変な声が出そうになるのを必死で我慢していたんだぞ!」
「愛紗はもうちょっと痩せて、胸を減らしたほうがいいと思うのだ」
「好きで膨れたんじゃない! あと私は十分痩せている!」
あ、あはは。
ふ、太るとかー痩せるとか−胸のこととかー……
どうしてこうグサグサと私の胸に突き刺さるんだろう。
「他の皆は無事?」
「はい。箱や台車に忍んだ義勇兵は全員無事です。輜重隊に化けた義勇兵も、さすがに怪我人はいますが大したことはないかと」
「そっか、大成功だね」
「ご主人様たちの考えられた作戦のうち、一番楽な状況かと。やはり黄巾は精兵の軍と違い、崩れると脆いですね」
「内部で愛紗ちゃんたちが撹乱してくれたからだよ。まさかいきなり中から火の手があがったら、私も慌てると思うな」
「そうだな」
突然の同意の声に愛紗ちゃんと鈴々ちゃんが驚いて振り返る。
「わっ! 翠、いたのか!」
「ひどっ! 愛紗、ひどいぞ! 私はずっとここにいた!」
「にゃはは。白蓮お姉ちゃん並に影薄かったのだ」
「? 誰だか知らんが一緒にするな!」
「そうだよ。白蓮ちゃんなら発言すら気付かないよ」
「……それはそれでひどくないか、桃香?」
「お姉ちゃんはしょうがないのだ」
「桃香様……」
え、え?
私が悪いの!?
「あ
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