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ヱヴァンゲリヲン I can redo.
第九話 Misatos
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、認める印のスタンプを押さなくてはならない。これも作戦部長の仕事である。

「ったく…全然減らないわね…」

 特に今回の戦闘では被害が大きく、書類は前回の二倍ほどの書類が届けられていた。近接戦闘においての、使徒の能力を見違えたミサトの責任によるもの、とリツコから言われたのが心に残る。

 全くもってその通りだった。

 射出位置をもう少し遠い所に変更し、そこからのガトリングの一斉射を行えば被害も少なくて済んだはずである。自分の力不足を痛感した。

「はぁ…」

 ミサトは頭を抱えながら仕事を続ける。ゴミに埋もれた時計のアラームが鳴り、既に日付が一日進んだことが分かった。

「ずいぶんとお忙しいわね、ミサト」

 扉が開いて、リツコが部屋に入って来た。両手に、香り立つ湯気を放つマグカップを持っている。

 彼女特製のコーヒー、ミサトの好きなものだ。

「死ぬほど忙しいわよ…」ミサトは口を尖らせながら答えた。

 そしていつものように、リツコの手からマグカップを一つ受け取る。

 リツコはふっと笑って、いつもは日向の座る椅子に腰かけた。

「初号機パイロット、あの洞察力と行動力は目を見張るものがあるわね」

「そうね…私の立てた作戦なんて必要なかったもん…」

 頬杖をつきながら放った、リツコの発言がミサトの心に突き刺さる。おそらくそれを狙って、わざとリツコは発言しているのだろう。彼女の皮肉は強烈で痛い。

「作戦部長さんは大変ね…技術部は彼のおかげで仕事が少ないわ」

「それ以上いじめないでよ。今、物凄く疲れてんだから」

「そんな表情してたら、シンジ君に完全に見下されるわよ。年上ならもうちょっとシャキッとなさい」

「もう見下されてるわよ。仕事でもシンジ君に敵わなかったし、私生活なんてほとんど彼が実権握ってるわよ」

「なんとかして見返せればいいわね」

 リツコは再び笑った。ミサトはコーヒーを一口口にする。

「見返すというか…まあそうだけど。そう出来る方法があればいいのにね…」

「あるわよ…」

 リツコはそう言って横目でミサトを見やる。ミサトの体は、既に書類の上に崩れつつあった。

「リツコ…あんた…」

「睡眠薬よ、死ぬ量ではないわ」

 ミサトの瞼がゆっくりと閉じられる。

「連れて行ってあげるわよ、ミサト」

 リツコは不敵な笑みを浮かべた。

 ミサトのマグカップの湯気からは、珈琲の香りに混じった甘い罠がその匂いを漂わせていた。
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