第五章
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「じゃあ今からこの中に入って」
「兄が待っていますので」
「お兄さんもういるんだ」
「兄は私が誰とお付き合いしていて学校の成績がどうか、学校の生活の状況までいつも調べているんです」
それこそプライベート、麻美子が自室にいるかお風呂やトイレにいる以外は常にチェックしている、一歩間違えればストーカーだ。
「ですから大島君のことも」
「もう知ってるんだ」
「そのうえで会いたいと言っていました」
彼の方から既にそう言ってきているというのだ。
「今お家の茶室にいます」
「茶室あるんだ」
「はい、お習いで使いますので」
まさに日本のお嬢様だった。
「あります」
「茶室、そこで」
「二人でお会いしたいとのことです」
「そのお兄さんとか」
和製シュワルツェネッガー、趣味はトライアスロンで武道の達人、そして得意攻撃は急所攻撃という人物と二人だ。
「じゃあ行くか」
「あの、本当にいいんですよね」
麻美子は切実な顔で渉に尋ねた。
「兄に会って」
「決めたからさ」
渉は屋敷のその大きな門を見ながら答える、門は今は開いてはいない。
だがその向こうに相手がいる、そのうえでの返事だった。
「行くよ」
「そうですか、それでは」
麻美子は渉の言葉を受けてそのうえで門を開けた、そのうえで彼を松や池で奇麗にされた庭を通り屋敷の外れにある茶室に案内した。その茶室の前であらためて彼に言った。
「ここに兄がいますので」
「うん、この中に入ってだよな」
「私はここで待っています」
茶室の中には入らないというのだ。
「無事に戻って来て下さいね」
「勿論だよ、俺は戻るさ」
茶室のその入り口を見ても言葉と表情は変わらない。
「無事にね」
「では」
渉は麻美子に微笑んで挨拶を返した、そうしてだった。
茶室の狭い、人がやっと潜れるその中を通って中に入った。畳の狭いがわびさびがある茶室に入るともういた。
そのシュワルツェネッガーをアジア系にした黒い羽織りの緑の和服と濃い緑の袴の男が正座していた、彼は開口一番渉に言ってきた。
「よく来た」
声も低い、シュワルツェネッガーの吹き替えの様だ。
「酢に話は聞いているな」
「はい、貴方が乃木坂さんのお兄さんですね」
「乃木坂哲章だ」
自分から名乗ってくる。
「麻美子の兄だ」
「そうですね」
「茶の前に聞きたい」
既にだというのだ。
「いいだろうか」
「はい」
渉は哲章の前に正座した、茶釜を挟んで向かい合う。
見れば釜の中は煮えている、その中を見た。
すると哲章はこう渉に言ってきた。
「私は麻美子を誰よりも大事に思っている」
「妹さんをですね」
「私の宝物だ、麻美子にはいい相手と付き合ってもらいたい」
こう言ってくるのだ
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