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同士との邂逅
十四 憂虞
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面を片手に、屋上の手摺に腰掛けた子ども――ナルトは火影と同様里を一瞥する。しかし火影と違ってその眼は酷く空虚なものだった。

「月光ハヤテの身柄はこちらで預かっている。今は療養中だ」
「うむ。とりあえずこの一件が片付くまでは隠匿するように」
「御意……――――それでどうするつもりだ」
「何がかのぅ?」
「しらばっくれんな。その懐かしい木の葉――蛇の事だよ」

里から視線を外したナルトは、じとりとした眼つきで火影を見る。里に向けた空虚なものではなく確かに焦燥と懸念の色を含むその蒼に、火影はふと口許を緩ませた。

「第二試験を見るに、大方巣の卵でも狙ってるのだと思うがの」
「……卵を護る鳥狙いかもしれないだろ」
「時期が時期じゃ。中忍試験で巣立つであろう優秀な卵を手中に収めようとしてるのだろう」
立ち上る白煙を眼で追うふりをして、ちらりと火影はナルトを窺い見た。

「お主のほうこそどうなんじゃ?最近はまっすぐ家に帰ってるようだが」
「……話を変えるな」
にやりとした笑みを浮かべる火影にナルトは眉を顰める。直後手摺から降りた彼は真摯な眼で火影を見上げた。

「アイツの事は俺が責任を持つ。それより本当にどうするつもりなんだ。今からでも遅くはない、俺が……」
「大丈夫じゃよ」
遮るように言った火影の穏和な表情に決意のようなモノが窺い見えて、ナルトは唇を噛む。

木ノ葉の里に好意的とは言い難い砂と音の里の動き。今回のハヤテからの報告によりその疑念は確固たるものとなっている。ナルト本人はそれを中忍試験が始まる前から察していた。
一介の忍びには無理でもナルトなら一晩で叩き潰せる。そうしなかったのはやはり火影本人が引き止めていたからだ。

「………頑固じじいめ」
「酷いのぅ」
目尻を下げて苦笑する火影に、酷いのはどっちだと内心ナルトは舌打ちした。


三代目火影として里の長として、そして元担当の先生としてあくまでサシで闘う。そう胸の内で決定事項となっているであろう火影は、憂え顔をしているナルトに微笑んだ。

(…………くそっ)
煙たがられる自分に唯一笑顔を向けてくれたこの老人を失いたくない。けれど火影の意志を遮る資格など己は持ち合わせていないし、彼自身の意志をも尊重したい。
火影の微笑みを見た一瞬で、矛盾した考えがナルトの脳内でぐるぐると渦巻く。



そうして、彼を失った己は一体どうなるのだろうと、ぼんやりとした頭で考えていた。

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