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レインボークラウン
第二十話

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                   第二十話  外の二匹
 ワラビは右側から聞こえてきた音にびくっとなった。そのうえでその右側に顔を向けてこう言った。
「何かいるの?」
「いないわよ」
 ケムンパスもその右手を見た、そのうえでこう言うのだ。
「何もね」
「じゃあどうして音がしたのよ」
「ほら、あそこにビニールテープあるわね」
「ええ」
 見れば右手の家の玄関の上にビニールテープがラインを敷かれている、見れば風でしきりに動いている。
「ほら、風が強く吹いてね」
「それで音がしたの」
「そう、それだけよ」
 こうワラビに話す。
「というか大した音じゃないじゃない」
「けれど急に音がしたから」
 ワラビは泣きそうな顔だった、今も。
「怖くて」
「やれやれ、本当に怖がりね」
 ケムンパスはそんなワラビの言葉を聞いて呆れた、そして言うのだ。
「本当にね」
「そんなこと言ってもね」
「それだけ大きな身体だから大丈夫よ」
 ケムンパスから見れば彼女の何倍もある、十倍ではきかないかも知れない。
「本当にね」
「そうかしら」
「というかそれだけ大きいとね」
 ケムンパスはワラビの巨体を見ながら話していく。
「かえって皆怖がるわよ」
「そうかしら」
「そうよ、あんたがちょっと近寄ったら怖がる人いるでしょ」
「それが凄く嫌なのよ」  
 実はワラビは人懐っこい性格だ、それで人に寄っていくことが多いがそれがだというのだ。
「私噛んだり吠えたりしないのに」
「それはね。けれど大きいから」
 しかも顔の毛が長く目が見えにくい、しかしよく見ればそこにある目はとても優しく温かいものである。性格は目に出るというがそれを考えるとワラビの性格はかなりいいことがわかる。
「怖がられるのよ」
「だからなのね」
「堂々としてなさい、すぐに何にでも驚かないの」
「そうしたいけれど」
「あたしもいるからね」
 ケムンパスは自分のことも出して言った。
「いつも一緒じゃない。ご主人もいてくれてるでしょ」
「ケムンパスさんがいてくれたら。それにご主人も」
「大丈夫よ、びくびくしなくてもね」
「じゃあ少しだけでもね」
「今だけでもよ」
 急にずっとは無理でもそれでもだと、ケムンパスはワラビに言った。
「堂々としてね」
「うん、それじゃあ」
 ワラビは少しだけしゃきっとした、だがそれは一瞬でまたびくびくとしだす。だがその優しい目はそのままだった。


第二十話   完


                  2013・3・17
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